ドッグフードの着色料「黄色4号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「黄色4号(タートラジン)」

黄色4号(タートラジン)は、どちらかといえば地味な色味をしていることの多いドッグフードや犬用おやつを、明るく健康的な色に染めることのできる着色料です。
しかし黄色のヘルシーなイメージとは逆に、黄色4号には、喘息発作やアレルギー、胃炎などの誘発や、注意欠陥・多動性障害の症状の悪化など多くの危険性が指摘されています。
ワンちゃんへの健康リスクについては未知数のことも多いのですが、2017年11月現在までに判明している事実を踏まえてご説明していきたいと思います。

石油原料の色素の中では最も多く利用されている

黄色4号は「おうしょくよんごう」と発音し、タートラジンという別名で呼ばれることもあります。
石油を用いて人工的に作られた着色料であるため、自然界には存在しません。

黄色4号は、水に溶いた場合にはその名の通り黄色を呈しますが、アルカリ性の強い物質(重曹など)を足すと赤っぽく変色するという特性があります。
黄色4号を使用することで、鮮やかな黄色から温かみのあるオレンジ色まで、商品をパッと華やかに演出してくれる色を付けることができるのです。

使用用途はドッグフード、ワンちゃん用に作られたおやつや、人間用の食品(たくあんや福神漬け、佃煮、清涼飲料水、各種お菓子類など)、化粧品(シャンプー、化粧水、口紅、フェイスパウダーなど)、医薬品などと多岐に渡ります。
食料品売り場で明るい黄色に染められたたくあん(沢庵)を見かけることがありますが、あの商品にも黄色4号が使われていることが多いです。

黄色4号は単独で用いられる他にも、他の着色料と組み合わせて黄色やオレンジ色以外のさまざまな色味を作り出すことのできる便利な色素です。
そのため多くの製品に使用されており、石油を原料とする着色料の中では、最も使用頻度が高いといわれています(その分、摂取する機会も多いということになります)。

黄色4号は常温では粉末状や粒状で存在し、油やアルコールには溶けにくい性質を持ちます。
その反面、水に対しては溶けやすく、光や熱、酸にも変質しにくい色素です。
水溶性の黄色4号をアルミニウムと化合させ、水に溶けにくくしたものも利用されています。
これは「黄色4号アルミニウムレーキ」、もしくは「タートラジンアルミニウムレーキ」という名称で呼ばれます。

黄色4号に疑われる危険性

黄色4号は、日本では1948年に食品添加物として指定を受け、今日(2017年11月)まで使われ続けてきました。
しかし日本国内の一部の団体においては、独自の規制で使用を控えている所も見受けられます
また、オーストリアやノルウェ―、フィンランドなど、黄色4号を食品へ使用することを取りやめている国々も存在します。

日本の一部団体、そして各国で使用が認められていないということは、黄色4号に何かしらの問題があるということが推測できます。
その問題性をひとつずつみていきましょう。

アスピリン喘息やアレルギーを誘発するリスクがある

黄色4号は、皮膚科の医師たちの間では「注意した方がよい添加物」として認識されています。
それは、黄色4号を摂取することによって、アスピリン喘息と呼ばれる症状を引き起こす可能性があるからです(人間におけるデータです)。

アスピリン喘息はNSAIDs過敏喘息(※1)とも呼ばれ、アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬(※2)によって喘息の発作が誘発される病態を指します。
厄介なことに、アスピリン喘息は非ステロイド性抗炎症薬だけではなく、黄色4号や保存料である安息香酸ナトリウムなどによっても誘発されることが確認されているのです。

アスピリン喘息を持つ全ての人が、黄色4号によって発作を起こすわけではありません。
しかし、黄色4号が喘息を誘発する物質であることは確実視されています。
アスピリン喘息を持つ患者は、食品や医薬品に含まれている黄色4号や安息香酸ナトリウムなどにも注意する必要があるのです。

また黄色4号には喘息の他にも、じんましん、鼻水、鼻詰まり、目の痒みや充血などといったアレルギー症状を誘発するリスクも指摘されています。
黄色4号による喘息やアレルギー発症のメカニズムなどにはまだ解明されていない点もあり、ワンちゃんに与える影響に関してのデータもあまりありません。
しかし私たち人間と同じように、ワンちゃんたちにも喘息は起こります。
喘息を持つワンちゃんやアレルギー体質のワンちゃんは、念のために黄色4号にも警戒した方がよいでしょう。

※1 NSAIDs過敏喘息・・・NSAIDs(エヌセイズ)とは、「Non Steroidal Anti Inflammatory Drugs」の頭文字を取ったもので、「非ステロイド性抗炎症薬」を意味しています。
従来の「アスピリン喘息」という病名は、「アスピリンによってのみ発症する喘息」というイメージを持たれがちでした。他の薬品でも起こる可能性があることを示すために、こちらの名称が用いられるようになってきています。

※2 非ステロイド性抗炎症薬・・・熱や痛み、炎症を静める作用を持った薬品の総称です。医師から処方される以外にも、市販の解熱鎮痛薬や消炎剤などにも幅広く配合されています。
アスピリンやイブプロフェン、インドメタシンなどは全て、非ステロイド性抗炎症薬に分類されます。

動物実験において、胃炎や慢性皮膚炎の発症などが認められている

ビーグル犬に対して行われてた実験によると、フードに2%の黄色4号を混ぜたものを与えたケースにおいて、胃炎を発症したというデータが出ています。
またマウスによる実験では下痢や、慢性皮膚炎の発症・症状の悪化などが確認されており、この結果から、黄色4号によるアトピー性皮膚炎の炎症増強が懸念されています。

シーズーや柴犬、ダルメシアン、パグ、ブルドッグ、ミニチュアシュナウザーなど、遺伝的にアトピー性皮膚炎にかかりやすい体質を持つワンちゃんも存在します。
こうしたワンちゃんたちや、すでにアトピー症状を発症しているワンちゃんに対しては、フードやおやつ選びに特に注意してあげましょう。

注意欠陥・多動性障害の症状を悪化させる可能性がある

黄色4号には、合成保存料である安息香酸ナトリウムと一緒に摂取することによって、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状悪化のリスクがあるといわれています。
そのためEU(欧州連合)の黄色4号の使用を認めている国々は、黄色4号を含む食品へ「子供の行動、注意力に悪影響を及ぼす可能性がある」という旨の警告文を添えるよう、2010年7月から各メーカーへ義務付けているのです。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは、注意力や集中力に難があり、ジッとしているのが苦手(多動)、なかなか約束を守れない、感情を抑えるのが不得手、物をよく忘れたり失くしたりするなどといった症状を特徴とする発達障害の一種です。
人間にみられることの多い障害ですが、まれに注意欠陥・多動性障害を持ったワンちゃんも存在します。

注意欠陥・多動性障害のワンちゃんには、落ち着きがなく散歩などがうまくできない、長時間元気に動き回っても疲れた様子がみられない、色々な物を破壊するなどといった行動がみられることがあります。
一見すると、「元気が有り余っている陽気な犬」といった印象を受けるこれらの行動ですが、時に人間や他の動物に悪気なく飛びつきケガをさせてしまうといったケースもあるため、放置しておくこともよくありません。
また、この障害のワンちゃんには、「呼吸数や心拍数の増加」、「食欲はあるのに痩せる」など、身体面への影響も懸念されます。

黄色4号が人間同様、注意欠陥・多動性障害のワンちゃんにも悪影響を与えるのかどうか、確かなことは分かっていません。
しかし、喘息やアトピー性皮膚炎を持つワンちゃんと同じように、上記のような行動傾向を持つワンちゃんにとっても、黄色4号は極力避けた方がよい添加物であると考えられます。

黄色4号アルミニウムレーキに懸念されるリスク

前述の、黄色4号を水に溶けにくくした黄色4号アルミニウムレーキ(タートラジンアルミニウムレーキ)も、安全性が疑問視されている添加物です。
黄色4号アルミニウムレーキに関しては、黄色4号ではなくアルミニウムが問題となります。
アルミニウムにはラットの実験によって、腎臓や膀胱機能の障害、生殖器や神経系への悪影響、握力の低下といったさまざまな毒性が報告されているのです。

一方、過去によくいわれていた、「アルミニウムがアルツハイマー型認知症の発症率を上昇させる」という説は、2008年にEFSA(欧州食品安全機関)(※3)によって否定されています。
さらに2011年にはJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)(※4)が、「両者の因果関係を証明できるだけの根拠が見つからない」という発表を行っています。
とはいえ、ラットの実験結果を考えると、黄色4号アルミニウムレーキも愛犬に安心して摂取させられる着色料であるとは判断できません。

※3 EFSA(欧州食品安全機関)・・・イタリアの都市パルマに存在する機関であり、食品から飼料、動物・植物の健康に至るまで、さまざまな項目のリスク評価や情報提供を行っています。

※4 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)・・・食品や毒性研究などの専門家による、添加物の安全性の確認や摂取量の策定などを行う機関です。FAO(食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)によって組織されました。

まとめ
ある物質によって健康被害が出るかどうかは、体重に対してどれだけの量をどの程度の期間に渡り摂取したかによっても異なります。
そのため、一度や二度、黄色4号を含んだフードをワンちゃんが食べたからといって、何か症状が出るというリスクは低いでしょう。

また、黄色4号が使用される際には、その食品に対して多くても一万分の一、少ない場合で二十万分の一程度の量しか添加されないことが一般的です。
したがって、通常の食事を摂っている分にはそれほど神経質になる必要もないのではないかという意見もあることは事実です。

しかし黄色4号は、さまざまな健康への悪影響が懸念されている添加物です。
ワンちゃんに対しては確かな裏付けがない項目も多いですが、なるべくであれば愛犬には摂取させたくないと思う飼い主さんも多いのではないでしょうか。
特に、人間に対する影響が確実視されている喘息発作の誘発リスクには、気を付けておきたいものです。