ドッグフードの原材料「ビートパルプ」の役割と犬への影響

ビートパルプとは

ドッグフードによく使用される材料のひとつに、「ビートパルプ」というものがあります。
この「ビートパルプ」とはどのようなものなのでしょうか。

ビートパルプの原料は、砂糖の原材料にもなっている甜菜(サトウダイコン)です。
ビートパルプ自体はこの甜菜から糖分を絞り出した後の「残りカス」ですが、その中にもわずかに糖分も残っているため、甘味料としても使用されます。
犬は甘味を感じる力が比較的強く、甘みを付けることで食いつきをよくすることが期待できます。

食物繊維が豊富で安価なため、甘味料だけでなくドッグフードの材料としても使用されていますが、ビートパルプ自体に栄養素はほとんど残っておらず、かさ増しのために使われていると考えてよいでしょう。
犬にとっては消化しにくいもので栄養もなく、デメリットも多いため、悪ではないですが積極的に摂るべきものではありません。

ビートパルプがもたらす影響

わんちゃんへの健康面の影響はさておき、ビートパルプはメーカー側にとってはメリットの多い原料です。

  • 甘いので、食いつきをよくすることができる
  • 安価で加工しやすく、かさ増しになる
  • 便を固める働きがあるため、軟便で悩む飼い主さんへの宣伝文句となる

しかし実際には、あまり良いものとはいえません。
ビートパルプがわんちゃんにもたらす影響には、どのようなものがあるでしょうか。

便秘になる

ビートパルブは食物繊維が豊富ですが、犬の身体ではこれを上手に消化することができません。
また、栄養は絞ってしまってほとんどないようなものなので、犬にとっては単に「消化しにくいもの」がかさ増しとして使用されているに過ぎないのです。
少量ならば腸内環境を整えたり、腹持ちをよくするのに効果的なビートパルプですが、かさ増しのために多く使われていては逆効果です。
うまく消化できずに便秘になってしまう可能性があります。

しかし中にはこれを逆手にとって、「植物繊維配合」と表記して売りにしている商品もあります。
人間にとっては腸内環境の改善に効果的なものなのでプラスのイメージがありますが、ドッグフードに使用されるビートパルプは粗悪なものが多く、犬にとって良いものではありません。
それが増量剤として使われているならば尚更です。

食べ続けると慢性的な便秘を引き起こすことがあり、注意が必要な原材料です。
便秘状態が続くと、腸にポリープが出来たり、がんになってしまうこともあります。

残留した薬剤が身体に悪影響を及ぼす可能性がある

前項で「ドッグフードに使用されるビートパルプ」と記述しましたが、実は「人間の食用として砂糖を抽出したもの」と「ペットフードなどに使用するためのビートパルプ」があり、この二つには大きな違いがあります。
その違いは、ビートパルプ(繊維)を抽出するときの方法です。

  • 圧力をかけてゆっくり糖分を取り除いたもの(人間の食用)
  • 薬剤を使用して繊維質のみを素早くとりだしたもの(犬用など)

前者は圧力をかけて糖分を抽出する方法で、その残りかすがビートパルプになります。
これは後者に比べて時間はかかりますが安全なやり方で、残ったビートパルプにも善玉菌の餌となるオリゴ糖が残っています。
こちらは主に人の食用に使用されます。

後者は硫酸系の薬剤を使用して溶かし、繊維質のみを簡単に取り出す方法です。
手間はかかりませんが、精製されたビートパルプに薬品が残留している可能性があります。
全てのドッグフードにこの方法が使用されているとは限りませんが、コスト削減のためにこちらの方法が取られているものも多いと思われます。

残留した薬剤は、ドッグフードを通してわんちゃんの身体へ入ることとなります。
量としてはごくわずかなものになりますが、ドッグフードは毎日食べ続けるものですし、身体の小さな小型犬の場合は実害が出てしまう可能性があります。
また、この薬剤には便意を抑える働きがあり、様々なトラブルを引き起こす原因になります。

便の状態から体調を確認しにくくなる

薬剤で抽出したタイプのビートパルプには、便を固くする働きがあります。

わんちゃんの軟便や下痢で悩んでいる飼い主さんの場合、ビートパルプが含まれるドッグフードでそれが改善されれば、「ドッグフードのおかげだ」と喜ぶかもしれません。
実際ドッグフードのレビューにも「よいうんちをするようになった」と書かれていたり、メーカー自体もそれを売りにしている場合もあります。

しかしこれは、ビートパルプに残留した薬品が便意を抑えているために起こる現象なのです。

便意を感じずに過ごしていると、便は大腸に長時間とどまることになります。
すると大腸で水分が再吸収され、硬い便として排出されます。
これは人間でいう「便秘」の状態を、無理矢理作り出していることになります。

ですので、たとえ消化不良で下痢になっていたとしても、実際の便よりも固い状態で排出されるため、わんちゃんの体調不良に気づけない可能性があります。
犬は、言葉で身体の異常を伝えることはできません。
そのため便は犬の体調を知るうえで、非常に大切なバロメーターになります。

しかしそれがわかりにくくなってしまえば、病気の早期発見を妨げる恐れがあります。

そもそも、薬剤によって腸内の働きが捻じ曲げられてしまうのは、決して自然なことではありません。
この場合の便は固く、においも少ないため処理は楽です。
ですがわんちゃんの体調を考えるならば、このようなドッグフードは購入しないほうが良いでしょう。

まとめ
ビートパルプ自体には、毒性はありません。
むしろ少量で適切な処理をされているものならば、腸内環境の改善に役立ちます。
しかしドッグフードに使用されるビートパルプは、薬剤によって抽出されたものが多く、しかもそれを「かさ増し」として適切ではない量が使用されていることも考えられます。

特に原材料表示の頭のほうに「ビートパルプ」の文字があれば、それだけ多く使用しているという証拠です。
ビートパルプは悪ではありませんが、デメリットの多い原料でもあります。
これがメインの材料になっているようなドッグフードは、わんちゃんには食べさせないほうが良いでしょう。