ドッグフードの栄養素「ビタミンE」の働きと過剰・欠乏について

ドッグフードの栄養素「ビタミンE」

ビタミンEは強い抗酸化力を持つことで知られ、私たちにも馴染みの深い栄養素です。
スーパーに行けばビタミンE強化をうたった卵やお菓子なども売られていますし、健康や若さを保つために、ビタミンEの含まれたサプリメントを愛用されている方も多いのではないでしょうか。
しかしビタミンEにはさまざまな種類があり、それぞれで作用や強さが異なることなどはあまり知られてはいません。

ビタミンEは多くのドッグフードにも添加されており、ワンちゃんの健康にとっても重要な成分です。
愛犬のためにも、ビタミンEについて詳しく勉強していきましょう。

ビタミンEの持つ健康効果

ビタミンEは、1922年のアメリカにおいて抗不妊因子として発見された脂溶性ビタミン(水に強く、油に溶けやすいビタミン)の一種です。
しかし、2017年現在においては、強い抗酸化力を持つことでスポットを浴びています。

ビタミンEは8種類に分けられる

ビタミンEは全部で8つの種類に分けられます。
構造の違いによって「トコフェロール」と「トコトリエノール」に分かれ、それぞれに「α(アルファ)」、「β(ベータ)」、「γ(ガンマ)」、「δ(デルタ)」の4種類が存在します。
トコフェロールは作用の持続性に優れており、トコトリエノールには即効性があります。

この中で最も強力な作用を持つとされているのが、紅花油や大豆油、ナッツ類や野菜などに多く含まれる「α-トコフェロール」です。
α-トコフェロールはドッグフードはもちろんのこと、私たちが口にする食品やサプリメント、医薬品などに幅広く利用されています。

トコトリエノールは米ぬかやヤシの実(パーム油)、アーモンドなどに含まれていますが、含有量がごくわずかであるために、これまではトコフェロールほど重要視されてはいませんでした。
しかし、血液中のコレステロールを下げる効果は、トコフェロールよりもむしろトコトリエノールのほうが優れているということなどが徐々に解明され、にわかに注目を集めています。

さらにビタミンEには天然合成天然型の3つが存在します。
ビタミンEの含有量の高い植物性の油から抽出されたものを「天然」、石油などから人工的に合成されたものを「合成」、天然のビタミンEに酢酸などを組み合わせて安定させたものを「天然型」と呼びます。

それぞれは表示名で区別されていますので、一度法則を覚えてしまえば簡単に見分けをつけることができます。
α-トコフェロールを例に挙げると、

  • 天然のビタミンEは「d-α-トコフェロール」
  • 合成のビタミンEは「dl-α-トコフェロール」、「酢酸dl-α-トコフェロール」
  • 天然型のビタミンEは「酢酸d-α-トコフェロール」

という形でドッグフードのパッケージなどには記載されています。
天然は「d-」、合成は「dl-」が頭に付くと覚えておけば分かりやすいです。

ワンちゃんの体内においての作用は、合成→天然型→天然の順番に強くなります。
天然のビタミンEは、合成のものに比べて効力が約1.4倍から1.5倍程度高くなるともいわれているのです。
ビタミンEの添加されているフードやおやつを愛犬に与える際には、天然のビタミンEが使われた商品を選んであげるようにしたいですね。

各ビタミンEの特徴を表にまとめましたので、情報の整理にご活用ください。

ビタミンEの種類 生成方法 表示例 効力の強さ
天然 植物油などから抽出 d-α-トコフェロール 最も強力
(合成の約1.5倍)
合成 石油などから人工的に合成 dl-α-トコフェロール
酢酸dl-α-トコフェロール
最も弱い
天然型 植物から抽出したものに、酢酸などを作用させて安定化 酢酸d-α-トコフェロール 天然と合成の中間

抗酸化作用に優れたビタミンE

体内が酸化するメカニズム

ビタミンEの最も重要な働きといえば抗酸化作用です。
ビタミンEの抗酸化力のお話の前に、簡単に活性酸素による体の酸化のご説明をします。

ワンちゃんの体内では、常に活性酸素が発生しています。
活性酸素は、酸素が化学変化を容易に起こしやすくなった状態のものを指します。
活性酸素は紫外線やストレス、大気汚染、激しい運動などで発生しやすくなりますが、物を食べたり呼吸をするだけでも生まれているのです。

この活性酸素は、体の中に存在する脂質を酸化させ(サビつかせ)、酸化された脂質は「過酸化脂質」と呼ばれます。
過酸化脂質が生まれてしまうと、芋づる式に体内の細胞が酸化し傷つき始めます。
すると、老化の進行が速まったり、皮膚病やアレルギー、高血圧やガンなどの病気が発症したりと、健康上にさまざまな悪影響が出てくるのです。

ビタミンEは酸化しやすい細胞膜を守る

活性酸素の標的となりやすいのが、主成分が酸化しやすい脂質である「細胞膜(細胞の表面に存在する膜)」です。
ビタミンEは、自分自身が身代わりとなって酸化することで、細胞膜を酸化からガードしているのです。
酸化したビタミンEは「ビタミンEラジカル」という物質に変わります。
本来はここで役目を終えるはずのビタミンEですが、ビタミンCが一緒に存在する場合に限り、ビタミンCの作用で再びビタミンEへと戻り、また活性酸素と戦うことができるようになるのです。

そのため愛犬には、ビタミンEとビタミンC、さらにはビタミンAを一緒に摂取させることをオススメします。
ビタミンEにはビタミンAの分解を抑える働きがあり、結果的にビタミンAの吸収率を上げることに繋がるのです。
合わさると抗酸化作用が大幅にアップするこれら3つの成分は、まとめて「ビタミンACE(エース)」とも呼ばれています。

さらに、ワンちゃんにビタミンEを摂取させる際には、タンパク質も不足していてはいけません。
小腸で吸収されたビタミンEは、タンパク質が主成分であるキロミクロン(カイロミクロン)という球状の物質に取り込まれて、肝臓へと運ばれます。
タンパク質不足の場合にはキロミクロンが生成されないため、ビタミンEの運搬や利用の効率が悪くなるのです。
とはいえ、ワンちゃんの場合は肉や魚をメインの食材として食べているケースが大半であることから、きちんと食事が取れている場合はタンパク質不足はそこまで心配しなくても大丈夫でしょう。

ビタミンEはこうしたさまざまな栄養素と助け合いながら、ワンちゃんの体を酸化の害から守っているのです。

ビタミンEのその他の働き

ビタミンEは抗酸化作用の他にも、ワンちゃんの健康にとって役立つ働きをします。

前述の通り、ビタミンEはもともとネズミの不妊の研究から発見された栄養素です。
ビタミンEには性ホルモンの生成をサポートしたり、分泌量を調節することにより、ワンちゃんの生殖機能を正常にする作用もあるのです。
ワンちゃんの正常な妊娠や出産を助けるだけでなく、ホルモンバランスの乱れから体調を崩しやすい子にも最適な成分です。

また、血管内部の酸化を抑えることによって、血流を良くする作用や、鉄欠乏性貧血を予防する働きもあるといわれています。

種類による作用の違い

ビタミンEには血中の悪玉コレステロールの数を減らす作用があるともいわれていますが、この働きはδ-トコトリエノールにみられるものであり、最もよく使用されているα-トコフェロールにはほぼみられないという新しい研究結果が出ています。

またγ-トコフェロールには、余分な水分の排泄を促して体内の水分バランスを保つ効果があることが分かってきており、サプリメントなどに使われ始めています。

さらには、ビタミンとしての作用はδ→γ→β→αの順に強くなりますが、抗酸化力の強さに限った場合には、α→β→γ→δという具合に真逆になるともいわれているのです。

こうした研究を通して、今までの「一番強い生理活性を持つα-トコフェロールだけ摂っておけばよい」という考え方から、「さまざまな種類のビタミンEを合わせて摂取することが、健康にとって有益である」という考え方へと変わりつつあります。

ビタミンEの欠乏と過剰のリスク

ビタミンEは、脂溶性ビタミンの中では最も安全性が高く、ワンちゃんへの毒性もとても低い成分であるといわれています。
愛犬が健康で食事の管理もしっかりとできている場合には、ビタミンEの欠乏や過剰に対してそれほど神経質になる必要はありません。
しかし、ワンちゃんの状況によってはどちらも起こりうる可能性がありますので、油断は禁物です。

病気や食生活により欠乏することもある

肝臓の疾患を抱えているワンちゃんは、脂質が上手く吸収できなくなることがあるために、脂溶性であるビタミンEの吸収率も同時に低下する恐れがあります。
また栄養素を考慮せずに手作りフードを与えているケースでは、知らず知らずのうちにビタミンE欠乏となる可能性もあります。(「総合栄養食」表示のある市販のドッグフードを与えている分には、ビタミンEが足りなくなる心配はほぼありません)

ビタミンEの欠乏時にみられる症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 筋力の低下
  • 生殖障害(精子形成障害、出生率の低下など)
  • 皮膚の炎症
  • 免疫力の低下
  • 肝臓の壊死
  • 神経系トラブル(皮膚の感覚異常など)

過剰摂取の危険性は低い

もしもワンちゃんがビタミンEを少し多く摂り過ぎたとしても、それだけで体に悪影響が出るという心配は少ないです。
447mgのビタミンEを長期的に犬に与え続けた実験においても、体調に異常は生じなかったという研究結果もあります。
そのため、健康効果を狙って、ドッグフードの中に大量摂取にならない程度の高濃度のビタミンEが添加されているケースもあるのです。

さらには、ワンちゃんの(炎症を伴う)皮膚疾患の治療の一環として、大量のビタミンEを経口投与するという方法も多く用いられています。
これは、ビタミンEの脂質酸化防止効果や、皮膚の保護作用などを期待して行われます。

2017年10月現在までに、犬に対して「ビタミンEそのもの」が直接健康被害を与えたという研究データはありません
しかし、あまりにも多くのビタミンEを一度に投与した場合においては、その他のビタミン(ビタミンA、D、K)の吸収が阻害され、結果的に各ビタミン類の欠乏症が起こるリスクは指摘されています。

  • ビタミンA欠乏・・・夜盲症や白内障の発症。感染症にかかりやすくなるなど。
  • ビタミンD欠乏・・・骨折しやすくなる。筋肉が弱くなる。関節炎など。
  • ビタミンK欠乏・・・出血しやすく、血が止まりにくくなる。骨がもろくなるなど。

日本のペットフード業界が参考にしているAAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準において、犬におけるビタミンEの1日の必要量は最低で50IU(約35mg)、最高で1000IU(約670mg)(体重1kg当たり)とされています。
とはいえ、ビタミンE摂取量がこの最高値を超えたらすぐに健康被害が出るのかという点については、全く判明していません。

ドッグフードへの添加目的は栄養源と酸化防止

ドッグフードへ添加されているのは、主に「α-トコフェロール」と「ミックストコフェロール」です。
ミックストコフェロールとは、天然のd-α-トコフェロールやd-γ-トコフェロールといった数種類のトコフェロールを混ぜたものです。
α-トコフェロールは栄養源として、ミックストコフェロールはフード自体の酸化を抑えるために主に添加されています。
合成のdl-α-トコフェロールもドッグフードの酸化防止剤として利用されますが、ミックストコフェロールほどの効果は見込めません。
実際には、ビタミンEに加えてビタミンCやローズマリー抽出物などの他の抗酸化物質が組み合わされて、ドッグフードに配合されていることが多いのです。
こうすることにより、ドッグフードを酸化から厳重に守ることができます。

ビタミンEを多く含む食材

肝臓疾患などでビタミンEの吸収効率が悪くなっているワンちゃんの他にも、

  • 多価不飽和脂肪酸()の多いごはんを食べている犬
  • 妊娠中の犬
  • アジリティーやフリスビーなどのスポーツを行う犬
  • 警察犬や盲導犬、牧羊犬、猟犬など、仕事を持っている犬
  • 活発で散歩の時間が長い犬

などに対しても、ビタミンEを多めに摂ることが推奨されています。

激しい運動をすると、どうしても活性酸素が多く発生してしまいます。
体を動かす機会の多い愛犬にはしっかりとビタミンEを摂取させ、酸化の影響から守ってあげましょう。
ビタミンEを多く摂取することにより筋肉の損傷が抑えられたり、運動時の体の動きが良くなったりするという研究結果も出ているのです。

ビタミンEを多く必要とするワンちゃんたちには、通常の食事にプラスしてビタミンEを補給してあげることが有効です。
幸い過剰症の心配の少ないビタミンEは、ワンちゃんの毎日のごはんに気軽に取り入れやすい栄養素です。
参考までに、ワンちゃんが食べることができ、入手も簡単な食材のビタミンE含有量をまとめてみました。
愛犬のアレルギーなどを考慮しながら、与えてみてください。

まずは野菜の一覧です。
全体的に、肉類よりも野菜類の方がビタミンEを多く含む傾向にあります。

中でもモロヘイヤのビタミンE含有量は突出しています。
昔、エジプトの王様が病に倒れた際に、この野菜から作られたスープを飲んで全快したというエピソードから、「王家の野菜」を意味する「モロヘイヤ」と呼ばれるようになりました。
その名にふさわしく、モロヘイヤはビタミンEの他にもβ-カロテンやカルシウム、鉄分などのさまざまな栄養素を豊富に含んでいるのです。

犬の食欲を刺激する要素の少ない葉物野菜ですし、包丁できざむとネバつきも出るため、モロヘイヤを好まないワンちゃんも多いかもしれません。
しかし食べてくれるのであれば、モロヘイヤは愛犬の健康維持にとって、心強い味方となってくれるはずです。

こちらは魚や肉類、加工食品類のビタミンE含有量です。
鮎のビタミンE含有量はモロヘイヤを上回るほどですが、全体的には野菜よりも低めです。
ビタミンEをワンちゃんに摂取させるためには、野菜類を用いた方が効率がよいといえるでしょう。

※多価不飽和脂肪酸・・・脂肪酸の一種で、大豆油やごま油に多いリノール酸や、しそ油や亜麻仁油に含まれるリノレン酸、魚類に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などがあります。これらの脂肪酸は中性脂肪低下やアレルギー抑制などに効果的ですが、酸化しやすいことが欠点です。そのため、抗酸化作用のあるビタミンEなどで、過酸化脂質となることを抑えてあげる必要があるのです。

まとめ
その存在や作用が広く知られているビタミンEですが、今もなお行われている研究によって、さらなる健康効果や効果的な摂取方法などが発見される可能性も期待される栄養素なのです。
そうした未知の可能性を秘めたビタミンEは、老化やアレルギー、皮膚炎、ガンなどの生活習慣病からワンちゃんを守ってくれる頼もしい成分です。
愛犬の日々のごはんに上手に取り入れていきたいですね。