ドッグフードの原材料「七面鳥(ターキー)」に含まれる栄養素

ドッグフードの原材料「七面鳥(ターキー)」

七面鳥(ターキー)はニワトリや牛肉ほどではありませんが、比較的多くのドッグフードに原材料として使われている食材です。
しかし日本ではあまりメジャーではないため、「七面鳥」と聞いてもどのような栄養素を含んでいるのか、鶏肉などの他の肉類とどう違うのか、ピンと来ないかたも多いことと思います。
ここでは七面鳥(ターキー)の栄養成分や、犬への健康効果などについてご説明していきます。

七面鳥(ターキー)とは

七面鳥とは

七面鳥(ターキー)は、キジ目キジ科シチメンチョウ属に属し、体長は1メートル程度と比較的大きな鳥です。

野生の七面鳥はアメリカやカナダ南部、メキシコに多く生息しています。
食用として盛んに養殖されている国はアメリカを筆頭に、EU(ヨーロッパ連合)各国、ブラジルなどが挙げられます。
鳥肉と言えばニワトリが主役である日本において、七面鳥の飼育頭数は限られています。
そのため七面鳥といえば、「クリスマスの日に食べる鳥」といった程度の認識のみで、馴染みのないかたも多いのではないでしょうか。

野生と家禽(家畜として飼育されている鳥の総称)の七面鳥は種類が異なり、それは尾羽の色を確認することで区別ができます。
野生の七面鳥は尾羽の先が黒、食用として飼育されている七面鳥は白い色となっているのです。

七面鳥は興奮して頭に血が上ると、頭や首の露出した皮膚の色が鮮やかな赤や赤紫色になり、冷静になると血が下がるために青白くなるという変わった特徴を持ちます。
このように顔の色がコロコロと変わるところから、「七つの顔を持った鳥」という意味の「七面鳥」という名前が付けられました。
七面鳥の英語名である「ターキー」は、日本においては主に食用として用いられる七面鳥肉に対して使われることが多いようです。

七面鳥の栄養成分

七面鳥(ターキー)の肉はとてもヘルシーな食材です。
七面鳥は高タンパクで、鶏肉に比べると脂肪分が少ないことが一番の特徴です。
もちろん皮の部分には脂肪が含まれていますが、皮を取り除くと脂質はグンと減ります。
コレステロールも少なく、消化吸収に優れているため胃腸にも優しいというメリットもあります。
タンパク質や脂質のバランスは、鶏肉のササミと似ているといわれています。

七面鳥に豊富に含まれている各種栄養素と、その働きをみていきましょう。

ビタミンB2(リボフラビン)
粘膜や皮膚、被毛を健やかに保つ働きがあります。
脂肪がエネルギーへと変換される際に使われるビタミンでもあり、また不足すると筋肉量の低下を招くことなどから、活動的な犬ほど多くの量を必要とする栄養素です。
ビタミンB6(ピリドキシン)
タンパク質から血や肉、エネルギーを作り出す際に必要となります。犬はタンパク質を多く摂取する動物なので、積極的に摂りたいビタミンです。
ビタミンB6が不足すると疲労しやすくなるので注意しましょう。
ビタミンB12(コバラミン)
「赤いビタミン」と呼ばれ、葉酸とともに赤血球の生成を促進させる働きを持ちます。神経機能の正常化や脂肪の代謝にも関与しています。
亜鉛
スムーズな新陳代謝を行うためには欠かせないミネラルです。
カリウム
血圧を正常に保つ、神経伝達の正常化、エネルギー代謝を円滑にするなどの重要な働きをします。
主に赤血球内のヘモグロビンの原料となり、不足すると鉄欠乏性貧血を起こすことでも知られています。
マグネシウム
エネルギーの産生にかかわり、血圧のバランスを保つ、神経の興奮を抑える働きも合わせ持ちます。

このような私たちにとって馴染み深い栄養素に加えて、七面鳥には「セレン」も豊富に含まれています。
セレンはあまり耳慣れない物質だと思われますので、少し詳しくご説明しましょう。
セレンとは、1817年に発見されたミネラルの一種で、もともとは強い毒性のある物質として認識されていました。
ところがこのセレンは、生物の体にとって必要不可欠のミネラルだったのです。

セレンには抗酸化作用があり、生体の免疫機能を高める働きを持ちます。
同じように抗酸化力を持つビタミンEと合わさり、老化の原因となる活性酸素が細胞を傷付けることからも守ってくれるため、愛犬の若々しさを維持することにも役立つのです。
また、鉛や水銀、カドミウムなどの有害物質が体内に侵入した際には、それらと結合して毒性を消してくれる作用もあります。

セレンが不足すると、皮膚の乾燥や心臓機能の衰え、老化の促進、発ガンのリスクが上がるなど、深刻な状態になることもあるのです。

こうした優れた働きをするセレンですが、先に述べたように強力な毒性も併せ持っています。
したがって、セレンは生体にとってなくてはならないものではありますが、その量はごくわずかで事足ります。
健康維持に必要な量と、体に害となる量の差があまりないという、少々厄介なミネラルでもあるのです。

セレンを過剰に摂取した場合には、脱毛や下痢、胃腸機能の低下、疲れやすくなるなどのさまざまな症状が現れます。
しかし犬の体重や状態ごとに定められた適量のフードを与えている限り、セレンが過剰になる心配はないため、そこまで神経質になる必要はありません。

このように、愛犬の健康維持に欠かせない栄養素を多く含んでいる七面鳥ですが、意外にもリンの含有量は少ないのです。
ただし、肉類は本来リンを多く含んでいるものですので、あくまでも「肉類の中では少ない」という意味です。

リンとはミネラルの一種で、歯や骨の原料となる他、血液中のpHバランスを調節したり、筋肉や神経の働きを円滑にするなど、生物が生きていく上で需要な役割を果たしています。
しかしこのリンが過剰となると腎臓に負担をかけたり、尿石症になったり、骨がもろくなったりします。
七面鳥の肉中心の食事においてはリンを取りすぎる心配が少ないため、腎臓の病気を持っているワンちゃんや、結石ができやすい子などにも比較的安心して与えられる食材だといえます。

七面鳥が適している犬と与える際の注意事項

七面鳥(ターキー)が適している犬

七面鳥(ターキー)は高タンパクで低脂肪なため、肥満傾向にある犬や太りやすい体質のワンちゃんには特にオススメできる食材です。
また、若い頃よりも多くのタンパク質を必要とし、胃腸の働きが落ちてきたシニア犬にとっても良い選択肢となるでしょう。
リンの含有量が少なめな七面鳥は腎臓への負担をかけにくいので、腎疾患で治療中の犬にも適しています。
七面鳥は比較的アレルゲン(アレルギーを誘発する物質)となりにくい食材であるため、アレルギーを起こしやすい愛犬に、フードローテーションの中のひとつとして加えてあげてもよいでしょう。

鶏肉アレルギーのある犬は要注意

七面鳥(ターキー)はアレルギーを起こしにくい食材ではありますが、ワンちゃんが鶏肉アレルギーを持っている場合には注意が必要です。
鶏肉によってアレルギー反応が出る犬は、七面鳥に対しても同様にアレルギーを起こす可能性があります

もちろんニワトリと七面鳥は異なる鳥です。
しかし、両者が持つアレルギーの原因となる物質の構造が似ているため、犬の体内で働く免疫機能がニワトリと七面鳥を見間違えて攻撃してしまうことがあるのです。
このことを「交差(または交叉)感作」と呼びます。

私たち人間でも、スギの花粉症患者がヒノキの花粉にも反応したり、エビに対してアレルギーを起こす人がカニを食べても症状が出る、といったケースがあります。
それと同じようなものだとお考えください。

ワンちゃんの健康に多くのメリットがある七面鳥(ターキー)ですが、日本産のドッグフードではあまり使われていない印象があります。
しかし海外では七面鳥が日常的に食べられている国もあり、ドッグフードにも多く取り入れられています。高タンパクで低脂肪なことから、特にダイエット目的のフードに使われることが多いです。
七面鳥をベースとしたドッグフードを探される場合には、外国製のものに目を向けてみると、豊富な種類の中から愛犬に合ったフードが見つかる可能性が高くなるでしょう。

七面鳥は脂質が低めのため、ワンちゃんによっては食い付きが悪くなるケースがあります。
こうした食い付きの悪さをカバーするために香料などの混ぜ物が入ったフードもありますので、パッケージをよく確認して選ぶことをオススメします。
人間も食べられるグレードの新鮮な肉類や良質な脂を使用しているドッグフードであれば、添加物に頼らなくても喜んで食べてくれるワンちゃんは多いものです。

まとめ

七面鳥(ターキー)は、私たちにとってはそれほど馴染みのない食材です。
しかし七面鳥は、日本における消費量の少なさがもったいなく思えるほどに、人間やワンちゃんの体に嬉しいさまざまな栄養素がバランス良く含まれている優れた食材だったのです。
スーパーなどで日常的に手に入る肉類ではないので、七面鳥肉を使ってドッグフードを毎日手作りするということは難しいかもしれません。
しかし、七面鳥を主なタンパク源としたドッグフードは多くの種類が販売されています。
愛犬の食事に七面鳥肉を気軽に取り入れたい場合には、市販されているドッグフードが第一選択肢となるでしょう。