ドッグフードの原材料「そら豆」の栄養素と要注意の成分とは?

ドッグフードの原材料「そら豆」

鼻に抜ける独特の香りと濃厚な味を持ち、おかずやおつまみに最適なそら豆ですが、ワンちゃんにも与えられる食材であることをご存じでしょうか。
そら豆は、水溶性のビタミンやミネラルが豊富で脂肪分が少ないために、犬にとって非常に健康的な食べ物なのです。
しかし、ワンちゃんに食べさせる際にはぜひとも気を付けたいポイントもあります。
そら豆を安全に愛犬に食べてもらうために、しっかりとチェックしていきましょう。

そら豆は鮮度が落ちやすい

ビールとの相性抜群のそら豆は真夏の食べ物である、というイメージを持たれているかたも多いことでしょう。
しかし、そら豆の旬は4月から6月にかけてなのです。
昔から「旬の食べ物は健康に良い」といわれますが、もちろんこの時期に採れたそら豆も栄養価が高く、身体に害を与える可能性のある成分(4.【サポニンとレクチンには要注意】の項目をご参照ください)の含有量も少ないとされています。
ワンちゃんのごはんにそら豆を取り入れる場合にはぜひ、旬の時期に収穫されたものを使ってあげてください。

そら豆は、とても鮮度の落ちやすい食品として有名です。
鮮度低下とともに豆が硬くなり、栄養分も減るため、できるだけ新鮮なうちに愛犬に食べさせてあげましょう。
一般的には、そら豆を収穫してから3日を過ぎると美味しくなくなるといわれています。

そら豆を覆っている分厚いサヤは、中身の風味低下を防いでくれる働きを持ちます。
サヤ付きのものを購入し、中の豆は調理する直前まで取り出さないようにしましょう。

おいしいそら豆の見分け方は以下の通りです。

  • サヤが黒ずんでおらず、きれいな緑色をしている
  • サヤ全体がふっくらとしている
  • 細かな産毛がサヤの周りに生えている

といったものが新鮮だとされていますので、選ぶ時に注意してみてください。

そら豆に含まれる栄養素

タンパク質と炭水化物が多く、脂質は少ない

そら豆は100g中に約26gものタンパク質を含んでいます。
豆類の中では、「畑のお肉」と呼ばれるほどのタンパク質量を誇る大豆(35g)に次ぐ含有量であり、マグロの赤身(約26.4g)や、鶏のササミ(約23g)にも匹敵するのです。
反対に脂質は低く抑えられており、約2%程度です。
これらのことから、そら豆は「高タンパク低脂肪」な食品であることが分かります。
この点だけをみると、そら豆は体重が気になるワンちゃんにもオススメできる食品といえそうなのですが、炭水化物も多く含んでいるため、与え過ぎには注意してください。

水溶性ビタミンとミネラルに富む

さらにそら豆には、数種類の水溶性ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
それぞれの栄養素の働きをご紹介しましょう。

疲労回復効果を持つビタミンB1

チアミンとも呼ばれるビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーへと変換する際に働くビタミンで、疲労回復効果も期待できます。
ビタミンB1が不足すると、脱毛や嘔吐、四肢の麻痺やふらつき(脚気の症状)、さらには心臓肥大など重篤な症状にもなりかねません。
また、医学的にハッキリとした根拠は見つかっていませんが、ビタミンB1の欠乏によりワンちゃんが食糞行動()を起こす可能性があることも指摘されています。
ビタミンB1は水溶性のため、ワンちゃんの体内に留めておくことができません。毎日こまめに摂取させる必要がある栄養素です。

※食糞行動…犬が、自分やほかの犬が排泄した糞を食べてしまうことです。母犬が子犬の糞を食べる場合には、巣を清潔に保つ、ニオイを消して外敵から気付かれにくくするなどの目的があるため、正常な行為であるとされています。子犬の食糞行動もよくみられますが、成長とともに治まることが大半です。しかし、出産後でもない成犬の食糞は問題視されており、さまざまな原因が指摘されてはいますが、ハッキリとしたことは分かっていません。

生命維持に不可欠なビタミンB2

粘膜や皮膚を保護してくれるビタミンB2(リボフラビン)も、そら豆には含まれています。
ワンちゃんの被毛を作り出したり、美しい毛並みを維持する働きもあります。

またビタミンB2は、脂肪を燃焼させてエネルギーを産生する際に使われる栄養素です。
つまり、ワンちゃんが生きていくためには必要不可欠なビタミンなのです。

ビタミンB2の欠乏によって引き起こされる症状には、食欲低下や体重減少、皮膚炎、白内障、繁殖障害などが挙げられます。

体の抵抗力を上げるビタミンC

抗酸化力を持ち、ワンちゃんの免疫を強化してくれるビタミンです。
ビタミンC(アスコルビン酸)は皮膚を構成する成分のひとつであるコラーゲンの生成などにも関わります。
ワンちゃんは自分の体内でビタミンCを合成することが可能ですので、一般的には食べ物からの補給は必要ないといわれています。
しかし、病気やストレスなどの要因でビタミンCが不足することもあるのです。
そうした時にはそら豆などのビタミンCを含有している食品で補ってあげる必要性が生じます。

葉酸

葉酸は水溶性ビタミンの仲間であり、ビタミンB9 やビタミンM などと呼ばれることもあります。
葉酸は、ビタミンB12と協力して赤血球を作り出してくれる栄養素です。
ワンちゃんの体の中で蓄積される成分ですが、水溶性のためすぐに体外へと排出されてしまい、多くの量を溜めておくことはできません。
そのため、毎日少しずつ摂取することが大切です。
葉酸が欠乏すると、貧血や食欲不振、舌の炎症などが起こり、子犬の場合は成長が阻害される可能性もあります。

血管と脳に働くレシチン

レシチンは細胞の周りに存在する膜(細胞膜)の構成成分で、脂質の一種です。
大豆に含有されていることで有名な成分ですが、そら豆にも含まれます。
中性脂肪やコレステロールの数を減らすことにより、動脈硬化予防が期待できます。
記憶力を良好に保つ作用もあり、認知症を防ぐことができるのではないかともいわれている成分です。

精神安定作用を持つマグネシウム

マグネシウムはカルシウムとリンに続いて、骨の中で多くの割合を占めるミネラルです。
精神の高ぶりを静め、気持ちを安定させる作用があります。
また、血圧を正常値に保つ、動脈硬化の予防といった、シニア犬に嬉しい働きをしてくれるのです。
マグネシウムが不足すると、興奮状態となったり、震えやけいれんを起こすこともあります。

筋肉の動きをサポートするカリウム

カリウムは利尿作用に優れており、体内の余分なナトリウム(塩分)の排泄を促してくれる働きを持ちます。
適度なカリウムの摂取によって、ワンちゃんの血圧が正常に保たれる効果が期待できます。

筋肉の中にも多く含まれている成分であり、筋肉の伸び縮みをスムーズにする作用もあります。
そのため、カリウムが不足すると筋肉が動かしにくくなるといった症状が出てくるのです。

ワンちゃんが体内に溜めておけるカリウムの量には限りがあるため、毎日少しずつ摂らせましょう。

サポニンとレクチンには要注意

次に、そら豆を愛犬に与える際に、注意したい成分を2つご紹介したいと思います。

サポニンによる下痢に注意

そら豆にはサポニンという優れた抗酸化作用を持つ成分が含まれています。
サポニンは、コレステロール値の低下や免疫強化、抗がん作用などが期待できる成分です。
しかし、ワンちゃんの胃腸が弱っていたり、そら豆を大量に与えた時などには、下痢や嘔吐、腸内の炎症を起こすことがあります。
また、赤血球が破壊される可能性もあるのです。

レクチンを失活させることが必要

ひとつ上の項目で「レシチン」についてお話ししましたが、今度は「レクチン」です。
字は似ていますが、レシチンは脂質であり、レクチンはタンパク質の一種です。
さらにレクチンには、ワンちゃんに健康被害をもたらすリスクがあります。

レクチンは、ワンちゃんの腸の表面に存在する「糖鎖」と呼ばれる糖タンパク質や多糖類にくっついてしまうという性質を持ちます。
簡単にいうと、腸内の壁にレクチンがベッタリと張り付いてしまうのです。
すると、食べた物の消化や吸収が妨げられたり、嘔吐や下痢が誘発されます。

またワンちゃんの免疫は、レクチンを異物として排除しようとします。
そのため、体のあちこちでアレルギー反応のような炎症が起こる可能性があるのです。

レクチンには、細菌の働きを弱めて増殖をストップさせたり、ワンちゃんの体の免疫力を上げるというメリットもあります。
しかし、そうした利点以上に、ワンちゃんに対する健康被害が深刻なため、レクチンを失活(働きをなくす)させる必要があるのです。

レクチンの活性をなくす方法は、まず、そら豆を2倍の量の水に入れ、一晩そのままにしておきます。水は何度か新しいものに交換しましょう。
そして、付け置きしていた水は調理前に全て捨ててしまいます。
この時、そら豆をきれいに洗うことも忘れないでください。

次に加熱調理をします。
そら豆のレクチンは温度にも強いのですが、70度以上のお湯で30分以上じっくりと加熱をすることによって、その働きが失われるといわれています。
時間がかかってしまいますし少し面倒ではありますが、愛犬の健康のため、この手間を惜しまないようにしましょう。

ワンちゃんの持つ腸内細菌や胃酸には、レクチンの一部を分解する働きがあります。
しかし、全てのレクチンに対処できるわけではありません。
愛犬の胃腸の調子が悪い時には、そら豆を与えることは控えた方がよいでしょう。

シニア犬や小型犬には小さくしてから与える

そら豆は豆類の中では比較的大きなサイズです。
しかも、ややモソモソとした重めの食感を持つため、決して飲み込みやすい食べ物ではありません。
シニア犬や小型犬、丸飲みの癖のあるワンちゃんなどは、誤って喉に詰まらせてしまう危険性があるのです。
そら豆は、愛犬が無理なく飲み込めるサイズに小さくしてから与えるようにしましょう。

また、ワンちゃんに与えるそら豆の調理法は、茹でることをオススメします。
そら豆の揚げ物は私たち人間にとっては嬉しい料理ですが、ワンちゃん達には脂肪分の摂りすぎとなってしまいます。
また、塩分過多を防ぐために、そら豆への味付けもしないほうがよいでしょう。

まとめ
そら豆の栄養素、そして注意点についてご説明しました。
健康効果を持つさまざまな栄養素を含んだ、ワンちゃんの体に嬉しいそら豆ではありますが、有害なサポニンとレクチンには要注意です。
しっかりと下処理をしてから調理したものを与え、愛犬がそら豆の有益な成分だけを取り込めるようにしてあげましょう。