韓国産ドッグフードは危険?衛生面が懸念される理由

ドッグフードの原産国「韓国」

時差がなく、東京からソウルまでは飛行機で2時間半程度、福岡からならなんと1時間程度で到着してしまう韓国(大韓民国)は、地理的には非常に日本と近い国です。

日本でも、韓国産の犬用おやつやグッズは多く販売されていますが、あまり話題になることはありません。
日本の愛犬家の多くが抱える韓国産ドッグフードへのイメージは、「衛生面に不安がある」といったものが大半です。

ここでは、愛犬家がこのような不安を抱くようになった要因や、韓国におけるペット事情、犬好きならばどうしても気になってしまう犬食文化などについて、ご紹介していきたいと思います。

韓国では小型犬や柴犬が人気

韓国・弘大(ホンデ)の街並みです。近隣に芸術大学があることから、アーティストを志す若者たちが集う、活気のある街です。韓国において主流の集合住宅が多く立ち並びます。

以前の韓国では、犬を育てる目的といえば「食べるため」でした。
犬を「ペット」として飼育しているのは一部の裕福な家庭に限られ、一般的ではなかったのです。
また、韓国では一戸建ての家よりもマンションやアパートといった集合住宅が主流であるため、「飼いたくても飼えない」という人もいたことでしょう。

しかし2000年頃から、ペットの飼育を許可する集合住宅も増え、犬を愛玩動物として飼う人たちが増加しました。
特に、マンションの室内でも無理なく飼育できる小型犬に人気が集中しているのは、日本と同様です。

韓国では、柴犬の人気も高まっています。
WEB上や書籍、日本映画などで柴犬の存在を知り、その可愛らしさの虜になる人が続出しているのです。
柴犬は、韓国の天然記念物に指定されている珍島犬(ちんどけん)とも似た姿をしており、それも人気に拍車をかけている一因です。
警戒心が強いものの、飼い主に対する忠誠心にあふれ、自分が心から信頼できる相手にだけ可愛らしい一面を見せてくれるところなど、柴犬と珍島犬は性格的にも共通点が多いといわれています。
珍島犬は成犬になると16kgから27kg程度まで成長するのに対し、柴犬は9kgから14kg程と、飼いやすいサイズであることも理由のひとつです。
反対に、日本人が珍島犬の魅力にはまり、韓国に渡って譲り受けたという事例もあります。

歴史認識問題により、国同士の関係が良好とはいえない日本と韓国ですが、愛犬家の世界では、柴犬や珍島犬の品評会などを通じて国民同士の交流が行われているのです。

韓国国内での愛犬家の増加にともない、トリミングサロンも増え、ワンちゃんの被毛へのカラーリングは日本よりも頻繁に行われているようです。
都市部には、ドッグカフェにドッグラン、犬用グッズや洋服が並ぶショップまで、犬関連の施設は一通り揃っていますし、日本と同様に犬の幼稚園(※1)もあります。

※1 犬の幼稚園・・・他の犬や人との交流や遊び、散歩、トレーニングなどを通じてワンちゃんの社会性を養ったり、臆病な性格を直したり、しつけを行う民間の施設です。飼い主さんが一緒に参加するのではなく、ワンちゃんを預かり、ある程度長い時間に渡って面倒をみるという点が、通常のしつけ教室と異なる点です。幼稚園のスタッフが、その日のワンちゃんの様子を記した連絡帳を飼い主さんに渡すなど、人間の学校のようなシステムを設けている所もあります。費用はかかりますが、愛犬のしつけや性格に悩む飼い主さん、仕事で家を空けがちな飼い主さんなどが多く利用しています。

さらに2014年からは、飼い犬の登録が義務化されました。
居住地を管轄する役所や動物病院で手続きをし、ワンちゃん固有の登録番号を発行してもらいます。その番号を記録したマイクロチップを犬の体内に埋め込む、首輪に付けることなどで身に着けさせるのです。
登録番号からは飼い主の情報が追跡できるため、ワンちゃんが迷子になった時などに役立ちます。

また、韓国では非常に安く犬を購入することができます。そのため、軽い気持ちで子犬を買ってしまい、手に余るとあっさりと捨ててしまう人も多く、問題となっているのです。
犬の登録制度は、この捨て犬問題への対策という側面もあります。

ちなみに、韓国では猫よりも犬が好まれています。
猫は昔から「縁起の悪い動物」といわれており、特に年配の人の猫に対するイメージは良いものではありません。
そのため飼育数も少なく、ワンちゃんに義務付けられている登録も、猫ちゃんは対象外です。
しかし、若者の中には古い言い伝えや迷信を気にしない人も多く、猫ちゃんの飼育数もジワジワと増えつつあります。

日本で韓国産ドッグフードが敬遠される理由

衛生面への不安

韓国産の犬用フードは、日本でも販売されています。
主食となるドッグフードよりも、豚耳や歯磨きガム、ジャーキー、犬用サプリメントなどのおやつ類において、「原産国:韓国」の表示が頻繁に確認できます。
また、フード類以外では、ワンちゃん用のデンタルジェルやペースト、おもちゃ、衣類なども、韓国で作られたものが売られています。

しかし、日本人の抱く韓国産のドッグフードへの印象は、決して良いものではありません。
韓国産のフード類で、2018年4月現在までに何かしらの問題が発覚した事例はありませんが、人間用の食品に関しては、数々の問題が起こっています。
そのため、韓国のドッグフード製造現場の衛生環境や原材料の安全性などについても、不安を持つ愛犬家が多いのです。

ここで、韓国産の食品の安全性が問題となった、いくつかのケースをご紹介します。

ラーメンから発がん性のある環境ホルモンが検出

2012年、日本にも輸入されていた韓国産インスタントラーメンを製造している会社の商品から、ベンゾピレンが検出されました。
ベンゾピレンは、発がん性を持つ環境ホルモンです。

この騒動により、日本の厚生労働省は、国内に流通している該当メーカーの商品を回収するよう各業者に呼びかけました。
しかし韓国のメーカーの言い分によると、「ベンゾピレンは排気ガスや焼き肉の焦げた部分にも含まれている物質である。当社の商品には、焼き肉を食べた時に摂取する量よりはるかに少ない量(1万6000分1程度)のベンゾピレンしか含まれていなかった」ということです。

とはいえ、本来食品に入っていてはいけない物質が混入していたという事実は、動かしようがありません。

魚介類や冷凍食品から大腸菌が検出

2012年から2013年にかけて、日本に輸入された韓国産のカニやまぐろ、冷凍食品、コーヒーなどから、大腸菌が検出されました。
混入経路はハッキリとは分かっていませんが、おそらく、トイレ後に手を洗わずに食品を取り扱った工場の作業員によるものであろうと推測されています。

唐辛子から大量の残留農薬が検出

2013年、韓国から日本へ入ってきた唐辛子から、殺菌目的で農薬として使用されるジフェノコナゾールが残留していることが発覚しました。
しかも、基準値の20倍という大変な量が残留していたのです。

ジフェノコナゾールは、遺伝毒性はないとされていますが、マウスを用いた実験によって、幹細胞への腺腫とガンの形成が確認されています。

糖蜜の回収にバキュームカーを使用

2014年、韓国にある調味料の製造工場において、糖蜜の不要な沈殿物の回収に、人の糞尿処理用のバキュームカーを使用したことが発覚しました。
メーカー側は、「沈殿物を回収して肥料に活用するために、吸引力の強力なバキュームカーを利用しただけ(糖蜜は粘り気があるため、吸い込む力の強い機械が必要)であり、食品用の原料に対しては使っていない」と説明しています。

しかし、普段は食用となる糖蜜が入っているタンクから、バキュームカーで吸引したこと自体が問題視され、警察の捜査が入りました。
また、本当にバキュームカーで吸引されたものが食用に加工されていないのかを疑う声もあります。

焼酎からタバコの灰と思われる物質が見つかる

2017年 、韓国産の焼酎の中から、タバコの灰のような異物が発見されました。
問題の焼酎を製造した業者は、「使用済みの空き瓶を洗い、新たに焼酎を詰めた」と証言しています。
瓶の洗浄が不十分であったため、前回の使用者が入れた灰が残ってしまったものだと考えられており、衛生管理の徹底がなされていないというイメージがついてしまいました。

鶏卵から殺虫成分が検出

2017年、韓国産の鶏卵から殺虫剤のフィプロニルが検出されました。
フィプロニルはノミやダニ、ゴキブリなどの駆除剤として使用される薬品です。

韓国の養鶏場では、狭いスペースにたくさんの鶏を詰め込むようにして飼育することが一般的であり、ノミやダニにも感染しやすい環境です。
また、鶏が砂浴びをするスペースもないため、自分で虫を落とすこともできません。
したがって、殺虫剤を使用して虫を退治しているのです。

フィプロニルは昆虫に特異的に働く薬剤であり、犬や人など哺乳類への毒性は低いといわれています。
しかし、ワンちゃんの体重1kg当たり1366mgを経口摂取した場合、5割の確率で死亡するリスクがあるとされている薬物でもあります。

この一件で問題となったのは、卵を産ませる鶏を飼育している農家ですが、食肉用の養鶏場で同様のことがないとは言い切れません。
鶏肉はドッグフードの原材料としても非常にポピュラーであるため、不安が残ります。

このように、韓国産の食品には数々の問題が起こっており、衛生観念や安全管理が疑問視されているのです。

犬を食べる文化への抵抗感

もうひとつ、日本人が韓国産のドッグフードを敬遠する理由があります。
それは、韓国の犬を食べる文化です。

2018年現在、韓国では食材として犬の肉や生体を販売することは法律で禁止されています。
しかし実際には、犬肉料理を提供するレストランは営業を続け、市場でも普通に犬肉を購入することが可能です。犬食を取り締まるための法律は、ほぼ機能していないと考えられます。

犬の肉は体を温め精がつくうえ、消化性にも優れているとされ、年配の男性や産後の女性などが食べることが多いようです。
とはいえ、実際に犬肉を食べたことのある韓国人は、全体の半分程度であり、若者の中には犬食に反対する人も多く存在します。

犬食に馴染みのない私たち日本人からするとショッキングな話ですが、世界的にみると、犬食文化自体はそれほど珍しいものではありません。
中国やフィリピン、タイ、古くはスイスやドイツ、フランスなどでも犬が食べられてきた歴史があります。

弥生時代以降の日本にも、犬食の文化が存在していました(それ以前の縄文時代には、犬は狩りの相棒として大切にされていたことが、遺跡調査などから判明しています)。
その後、仏教伝来とともに肉食自体が影を潜めるようになりますが(完全になくなったわけではありません)、江戸時代には、幕府政治への反抗心を、「犬を食べる」という一般的ではない行動によって表現した人たちが存在し、野犬や武士の飼い犬がさらわれては食べられていたと伝わっています。

その食文化が廃れるきっかけとなったのは、江戸幕府の第5代将軍である徳川綱吉が出した、生類憐みの令(しょうるいあわれみのれい)です。
動物の中でも、特に犬の保護を重視した綱吉は、現在でも「犬将軍」、「犬公方」などという名で呼ばれることがあります。

しかし生類憐みの令が保護しようとしたのは、犬だけではありませんでした。
鳥類を始めとする小動物、老人、子ども、女性、病人、囚人などのむやみな殺生や心無い扱いを禁じたこのお触れは、「社会的に弱い存在全てを守りましょう」という精神が根底にあったと考えられています。
同時に、広大な敷地に犬を集めて養うことは、捕食対象である野犬を保護するためばかりでなく、野犬の害から人々を守る目的や、犬食によって幕府へ反抗する勢力を弱体化させる目的もあったようです。

殺生を固く禁じられていた人々は、大飢饉に陥った時でさえ、目の前にいる鳥を食べることもできずに苦しんだと伝わっていますが、生類憐みの令によって、日本における犬食文化は次第に失われていきました。
第二次世界大戦後の食べるものがなく困窮していた時代には、やむを得ずに犬を食べることもありましたが、現在の飽食の日本で犬食を行っている人はほぼいないでしょう(例外的に日本でも、中国・韓国料理店では犬を使った料理が提供されています)。

犬食という文化に馴染みがなく、犬を愛玩動物や使役犬(盲導犬や警察犬など、人間のために仕事を与えられたワンちゃん)と考える現代の日本人が、犬食に嫌悪感や違和感を抱くのは自然な反応でしょう。
特に愛犬家にとって、犬は家族と同様の存在であるため、なおさらではないでしょうか。

日本における、鯨やイルカ、生の魚を食べる文化も、海外からは「野蛮だ」、「残酷だ」と非難の対象となっています。それに対する、「ならば、牛や豚は食べてもいいのか?」といった議論は頻繁に行われてきました。
自国にない文化だからという理由で、他国の文化を軽々に否定することの是非はともかくとして、「自分が理解しがたい文化」に出会った時に自然と湧き上がる抵抗感は抑えられるものではないでしょう。

犬を「愛玩動物」として考える国と、「愛玩動物でもあるが食料でもある」と考える国とでは、ドッグフードに対する意識にも隔たりがあるのではないか、と日本の愛犬家たちは考えているのです。

原産国だけでなく、原材料の生産国を確認する大切さ

日本では、2009年6月1日より、ペットフード安全法(正式名称は「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律」)が施行されました。

これは、ペットフードの素材、添加物の使用基準や残留農薬の量、栄養バランス、パッケージの表示項目やその方法などさまざまな事柄を規制し、粗悪なフードからペットの健康を守るために作られた法律です。
2018年4月現在、ペットフード安全法の対象となるフードは、犬用と猫用に限られています。

ペットフード安全法の詳細は、こちらの記事をご覧ください。→ドッグフードに関する法律の内容と問題点

この法令は、日本に輸入されるペットフードも例外なく対象とされます。
つまり、韓国産のドッグフードも、検査によって日本の基準に違反していることが分かった時には、輸入の禁止や回収の命令が出されるということです。
とはいえ、人間用の食べ物でも検疫をすり抜けて流通してしまう商品が存在する以上、安全性に問題のあるフードが一切入ってこないと断言することはできないでしょう。

また、ドッグフードのパッケージには、必ず「原産国」が表示されています。
現在の日本の法律では、ペットフードの原産国は「最終的な加工をした国」を表示すればよいという決まりになっています。
そのため、ほとんどの調理を海外で行い、最終的に日本で少しだけ加工をした程度のフードであっても、原産国欄に「日本」や「国産」と表示されている可能性があるのです。

このような詳細を積極的に開示しているメーカーばかりではありません。疑問に思った時には、企業に問い合わせることでしか、私たちが知る術はないでしょう。

もちろん原産国のチェックは大切ですが、それと同時にどこの国で作られた素材が使われているかも大切です。

例えば、カナダ産のドッグフードは素材や安全性にこだわって作られた商品が多く、日本でも良いイメージが定着しています。
しかし、2007年にアメリカを中心に世界的な騒ぎを起こした「メラミン入りのペットフード」の生産工場はカナダにありました。
そして、問題になったメラミンが混入した原材料は、中国産の小麦グルテンやライスプロテインだったのです。

メラミンは、意図的に混入されたものでした。
メラミンには窒素が多く含有されています。
そのため、窒素量からタンパク質量を求める検査法において、メラミン混入の原材料は、「タンパク質量が豊富な良質な素材」であると判定されてしまうのです。
このメラミンが混入したフードによって、世界中のワンちゃんや猫ちゃんが腎結石などで苦しみ、多くの子が腎不全を発症して亡くなっています。

メラミン混入ペットフードの事件に関する詳細はこちらのページで詳しくご説明しています。→中国産ドッグフードが危険といわれる理由

このように、イメージの良い生産国の商品であっても、危険性がゼロということはありません。
生産国の評価だけに左右されず、「原材料はどこの国のものが使われているか」、「それは人間が食べることのできる品質のもの(※2)か」、「メーカーはどのような理念を持ってフード作りを行っているか」などを、パッケージやWEBサイト、店頭に置いてあるリーフレットなどで確認することが大切です。

※2 ドッグフードには、人間が食べるには適さない食材が使用されていることが多くみられます。「人が食べられない」食材とは、基準値以上の残留農薬や放射能を含んだ食べ物や、腐敗して廃棄されるはずの食材、鶏のトサカや家畜の血液など本来食用とならない部位など、さまざまです。人間の食品基準に合格した素材が使われているフードには、「ヒューマングレード」と表記されているケースが多いですが、この言葉は正式なものではなく、メーカーによって異なります。もっと分かりやすく、「人間が食べられるレベルの食材を使用しています」などと書かれていることもあります。

まとめ

韓国を原産とするドッグフードによって、「メラミン混入ペットフード」のような大きな事件が起こった事例は、2018年4月現在までには確認されていません。
しかし、度重なる人間用食品の衛生上の問題により、「韓国産」の製品全体に悪いイメージが付いてしまっていることは確かです。

日本も同様ですが、一般的に動物の生命や健康は、人間よりも軽視されがちです。
日本においても、ペットフード安全法や動物愛護法などの法律が整えられる前までのペットフードは、「何を入れてもお咎めなし」の無法地帯でした。

法律によって、ようやく動物たちの健康が守られ始めた現在においても、ペットフードが法的には「食品」ではなく「雑貨」であることに変わりはありません。
その反面、人間用の食品は、詳細な安全基準が設けられ、一定の水準で安全性が確保されています(もちろん国によって違いはあります)。

日本の愛犬家からよく聞かれるのは、「韓国産の食品は、人間向けの物ですら衛生面での問題が多い。動物の口に入るペットフードとなれば、どこまでの配慮をもって生産されているのか不安がある」という言葉です。
韓国産ドッグフードによる問題が起こってない以上、この考えが単なる先入観である可能性も否定はできません。
韓国以外の国で作られたドッグフードであっても、サルモネラ菌やメラミンなどの汚染によってリコールに発展している商品は多く存在します。

ひとつの国の中には、さまざまなペットフードのメーカーや工場があります。その中には、いい加減な生産を行っている所もあれば、真面目な製品作りを行っている所もあることでしょう。
国全体として捉えるよりも、それぞれのメーカーや工場がどのような理念を持ってフードを生産しているかを、慎重に見極めることが必要なのかもしれません。

とはいえ、一度根付いた根深い不信感は、そう簡単に解消されるものではありません。
このような問題に敏感な飼い主さんは、「愛犬のために」と勉強熱心な方が多く、粗悪なドッグフードを選ぶ可能性も低いでしょう。
結局は、飼い主さんが納得して与えられるフードを選択することが、ワンちゃんの健康のためにもなるのではないでしょうか。