ドッグフードの着色料「赤色105号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「赤色105号(ローズベンガル)」

ローズベンガルという正式名称を持つ赤色105号は、日本において1948年に食品添加物として指定された着色料です。 赤色105号は、特にタンパク質をキレイに染めることが可能です。また、日光(紫外線)には弱いですが、加熱をしても退色が少ないというメリットもあります。 タンパク質との馴染みが良く熱に強いということは、肉や魚を使い、高温で加熱して作られることの多いドッグフードとも相性が良いということです。 しかし、日本以外で赤色105号を認可している国はほとんど存在せず、ドッグフードにもあまり使用されてはいません。 赤色105号とはどのような着色料であるのか、なぜ諸外国では使用禁止なのかなどについてご説明していきたいと思います。

薄いピンク色から濃い赤まで、さまざまな着色が可能

ドッグフードよりも人間用の食品に頻繁に使用されている

赤色105号は、水やアルコールに良く溶ける性質を持っています。 本来の赤色105号は、あずき色に近い暗めの赤色をした粉末ですが、水に溶かすと紫がかった鮮やかなピンク色になります。 他の赤色の合成着色料の色調は、真っ赤やオレンジがかった朱色、濃いピンクなどがほとんどですので、紫寄りの色味を持つ赤色105号は珍しい存在です。 赤色105号を使用しているドッグフードの種類は多くありません。確認できる限りでは、ワンちゃん用のおやつを薄いピンク色に染めるため、わずかに使用されている程度です。

おせち料理には欠かせない、鮮やかなピンク色に染められたカマボコ。

ドッグフードとは反対に、人間用の食品には赤色105号が添加されたものが多く製造されています。  前述の通り、赤色105号は熱に強いため、加熱が必要な食品に使用するのにも適した着色料です。 赤色105号がよく使用されている食品には、上の写真のように派手なピンク色のカマボコやソーセージ、ナルト(うず巻きの柄の部分)、桜でんぶ(魚介類を加熱しほぐしたものに味と色を付けた、ピンク色の食品です)などが挙げられます。 また菓子類では、紅白まんじゅう(ピンク色のもの)や、春をイメージした桃色の大福やらくがん(落雁)、寒天などの和菓子、イチゴ味のチョコレートにも使われています。 カマボコやナルトのうず巻きは濃いピンク色をしていることが多いですが、まんじゅうやイチゴチョコレートなどは淡いピンク色の商品が多いです。着色料は薄める濃度によって色味が変化するため、一種類の着色料でもいくつかの色調を出すことができるのです。

赤色105号は単独で用いられる他、異なる色の色素と混ぜ合わせて利用されることもあります。 黄色や緑色の着色料と混色をして、複雑な色味(茶色)を作り出すことも可能です。この色は、和菓子に使われるアンコの色などに利用されています(桜色をしたアンコを作る時には、赤色105号単独で使用されることもあります)。

食品以外では歯垢染め出し剤に添加されることも

食品以外で赤色105号がよく使われている商品のひとつが、歯垢染め出し剤(カラーチェッカー/カラーテスターなどとも呼ばれます)です。 歯垢染め出し剤とは、歯磨きがきちんとできているかを確認するために用いられるチェッカーです。ペーストタイプやジェルタイプ、液体、錠剤などいくつかの形状があります。 歯磨きをした後に歯垢染め出し剤を口に入れ、噛んだりうがいをしてから吐き出し、水で軽く口をすすぎます。すると、磨き残した歯垢が濃いピンク色に染まるのです。 歯垢染め出し剤は、下の写真のようにどぎつい赤色をしており、使用後は舌や唇が真っ赤に染まり、完全に落ちるまでには時間がかかります。

真っ赤な色をした歯垢染め出し剤(カラーテスター)。

赤色105号にささやかれている健康へのリスク

遺伝子損傷や内臓疾患などのリスクが指摘されている

赤色105号には、ラットやマウスを用いた動物実験を通して、

  • 食欲減少
  • 成長の障害
  • 遺伝子の損傷
  • 肝機能障害
  • 甲状腺の異常

などが確認されたというデータが報告されています。

遺伝子がダメージを受けると、細胞の死滅や発がんなどを引き起こすリスクがあるといわれています。 遺伝子の中には、細胞の増殖を司るものや、その反対に増殖を食い止める役割を持つものなどが存在します。 こうした遺伝子が、外的要因や加齢などによって損傷すると、必要のない時に細胞が増殖してしまったり、またそれをストップすることができなくなってしまう可能性があるのです。 こうして異常に増えすぎてしまった細胞がガン化していきます。

肝臓の機能が障害されると、食欲低下や体重減少、下痢や嘔吐、ひどくなると黄疸や腹水などがみられ、ワンちゃんの命にかかわるケースもあります。

これらはあくまでも、「このような健康障害が引き起こされる可能性がありますよ」というレベルの話にすぎません。 しかし赤色105号は、こうした健康上のリスクが懸念され、日本以外の国では使用が認められていない着色料なのです。 使用されていない着色料の毒性について研究する必要はないため、安全性をしっかりと検証するためのデータが充分に集まっていません。 したがって、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)(※1)においても、赤色105号についてのADI(一日摂取許容量)(※2)が設定できていないのです。

※1 FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)・・・添加物や薬剤の専門家が集まり、化学的な見地からさまざまな物質(添加物、動物用医薬品、毒物など)の安全性についての評価を行っています。FAO(食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)というふたつの機関によって運営されており、1956年から活動を行っています。

※2 ADI(一日摂取許容量)・・・ある物質を、一生涯毎日欠かさずに摂取し続けたとしても、健康被害が出ないと想定される「一日当たりの量」のことです。データ不足により、FAOが一日摂取許容量を設定していない着色料には、赤色105号の他、赤色104号(フロキシン)と赤色106号(アシッドレッド)があります。 赤色104号と106号の詳細に関しては、こちらの記事をご覧ください。
ドッグフードの着色料「赤色104号」の用途と犬に対する安全性
ドッグフードの着色料「赤色106号」の用途と犬に対する安全性

日本でも、赤色105号の使用が禁止されている食品もあります。 その種類は、お茶や味噌、野菜、ワカメやコンブ類、魚肉や食肉の漬け物、豆類など多岐に渡ります。 しかし、この規定は、赤色105号の危険性を特別に問題視して設定されたものではありません。赤色105号を始めとした「タール系色素」(※3)全般に適応される決まりなのです。

※3 タール系色素・・・赤色105号のように、「〇色△△号」と表記される合成着色料は、過去には石炭から燃料を取り出す際に得られる副産物「コールタール」を原料として作られていました。しかし、コールタールに発がん性があると判明してからは、石油から得られるナフサが原料として用いられています。2018年2月現在、コールタールから着色料を合成することは行われていませんが、昔の名残りでいまだに合成着色料は「タール系色素」と呼ばれているのです。

また、独自の規定によって、赤色105号を禁止している組織も存在します。 日本生活協同組合連合会では、独自の安全性評価の結果に基づいて、赤色105号を使用してはならないと定めています。 この理由については、「法的には認可されている着色料ではあるものの、明らかな問題点が存在するために、消費者への安全性を考慮した結果の判断である」といった主旨の説明がなされています。

不純物の残留が15%未満まで認められている

赤色105号を含むタール系色素は、法律によって「不純物が15%未満であれば含まれていてもよい」と決められています。 含有されている(かもしれない)不純物の種類は着色料ごとに異なりますが、赤色105号の中には、ヘキサクロロベンゼン(HCB)という汚染物質が混入している可能性があると指摘されています。

ヘキサクロロベンゼンは、発がんや、内臓機能の障害、胎児への悪影響(死産、奇形の発生など)といった多くの害をもたらすリスクのある有毒な物質です。 過去には防カビや殺菌を目的として利用されていましたが、2018年2月現在、日本では使用が禁止されています。

この件に対して厚生労働省は、「もしも赤色105号にヘキサクロロベンゼンが混入していたとしても、少量であるため健康への悪影響はない」と発表しています。 また政府は、着色料の製造メーカーに対し、「ヘキサクロロベンゼンの混入量を減らすように」との通達を出していますが、どこまで留意されているかはメーカー次第でしょう。

また、着色料に含まれる不純物に対する安全性の検証は、あまり行われていないことが現状です。 どの着色料にどのような不純物がどの程度含有されているのかは、ベールに包まれています。この不純物の中に、ワンちゃんの健康に害を及ぼす可能性のある物がないとは言い切れないのです。 不純物の健康被害のリスクの中で、最も懸念されている疾患はアレルギーです。 アレルギーは、それまでは何ともなかったとしても、ある日突然、どんなワンちゃんにも発症する可能性があります。 アレルギーは、「アレルゲン(※4)を摂取した量」ではなく、「摂取した回数」が多ければ多いほど、発症リスクが上昇します。 不純物の心配のある着色料を使ったフードを毎日与えることは、知らず知らずのうちに愛犬のアレルギー発症確立の上昇に繋がっているかもしれないのです。

※4 アレルゲン・・・アレルギーの症状を誘発する物質を意味するドイツ語です。

併用されることの多い赤色3号(エリスロシン)の危険性

ひと口に「赤色の着色料」といっても、赤色105号のような紫がかったピンクから、オレンジがかった赤、赤味が強いピンクなど、色味はさまざまです。 そのため、赤色の着色料を数種類混ぜ合わせることにより、ピンク色の色調にバリエーションを持たせることが可能となります。 赤色3号(エリスロシン)は、下の写真の大福のような薄紅色を出すために、赤色105号と併用されることの多い着色料です。

春らしい、薄紅色の大福。

赤色3号には、いくつかの健康リスクの可能性があるとのデータが出ています。 ビーグル犬を対象に行われた赤色3号の安全性試験では、毒性は確認されませんでした。 しかし、ヨードを含んだ赤色3号は、ラットに甲状腺腫瘍を引き起こすという研究データが得られています。さらには、ヘモグロビンや赤血球の減少も確認されているのです。 ヘモグロビンは赤血球の中に含まれ、酸素を全身へ運ぶという非常に重要な役割を担っています。これらが減少すると、体中に酸素が充分行き渡らなくなり、貧血を引き起こす可能性があります。 赤色105号と同様、日本では使用が認められている赤色3号ですが、こうした安全性への懸念があるため、アメリカ、ドイツ、ノルウェーなどでは食品への使用が認められていません

着色料は、単独での毒性試験は行われていても、複数の種類を混ぜた際の安全性については未確認なものも多く存在します。 色とりどりのドッグフードは、一見華やかでおいしそうに見えるかもしれません。しかし原材料欄を見ると、「赤色△△号」、「黄色××号」、「青色〇〇号」・・・・・・などと、着色料の名称が列記されていることも多いのです。 単品では安全性が高いといわれている着色料でも、他の着色料と組み合わさった時の危険性は未知数です。さまざまな着色料を使用したフードには、特に注意をした方がよいでしょう。

赤色3号に関する詳細はこちらをご覧ください。→ドッグフードの着色料「赤色3号」の用途と犬に対する安全性

まとめ
赤色105号について、現在(2018年2月)判明している範囲でご説明しました。 ワンちゃんたちは目の前の食品が「食べでも大丈夫な物か」、「自分の好みに合うか」などを、ニオイや味で判断します。そのため、ドッグフードをカラフルに着色することに意味はないのです。 幸いなことに、さまざまな健康リスクが指摘されている赤色105号を使用したドッグフードの種類は多くはありません。見た目が多少地味でも、愛犬に安心して与えられるフードを選んであげましょう。