ドッグフードの着色料「黄色5号」の用途と犬に対する安全性

ドッグフードの着色料「黄色5号(サンセットイエローFCF)」

黄色5号(おうしょくごごう)は別名をサンセットイエローFCFともいい、食品を黄色やオレンジ色に染めるために使用される着色料です。

黄色5号に限らず「〇色△号」という名を持つ着色料は、もともと石炭から燃料(コークス)を製造する際に得られる副産物であるコールタールから作られていました。
現在では、石油から得られるナフサが原料となっていますが、昔の名残りでいまだにタール系色素と呼ばれています。

黄色5号は、常温下ではオレンジ色の粉末状の形で存在します。
匂いはなく、光や熱にさらされても色が変化しにくい、少量でもきれいにまんべんなく色を付けられるといった特徴を持つ、利用者にとっては非常に使いやすい着色料です。

ここでは、黄色5号の利用用途や、ワンちゃんにとって健康被害の心配はないのかなどについて解説していきたいと思います。

ドッグフードにも人間用の食品にも頻繁に利用されている

カラフルなドッグフードや犬用おやつに使われる

黄色5号は、ワンちゃん用のドライフードやセミモイストフードに使用されていることが多いです。
こうしたドッグフードの中でも特に、赤やオレンジ、黄色、茶色、緑色など、さまざまな色の粒が混ざったカラフルな商品に高頻度で添加されています。

しかし黄色5号は、他の色の着色料と組み合わせることによって、素材そのものの色と見間違うような自然な色味を表現することも得意です。
そのため、一見すると「着色料不使用」と思われるようなナチュラルな茶色をしたドッグフードにも、黄色5号が使われているケースもあります。

普段から着色料を愛犬に与えないように気を付けている飼い主さんは、しっかりと原材料欄をチェックしてから購入されることをおすすめします。

また、ワンちゃん向けのおやつにも、黄色5号はたびたび使用されています。
特に多いのが、オレンジがかった黄色いチーズや、赤味を帯びた茶色をしたジャーキーや歯磨きガムなどです。
意外なところでは、ブルーグリーンのような色をした犬用液体歯磨きなどにも添加されていることがあります。
これは、黄色5号と青い色の着色料を混ぜて得られる色です。

人間用の菓子類から農海産物まで幅広く用いられる

人間用の食品では、オレンジ味やパイン味、レモン味などのキャンディーや、ジュース、かき氷のシロップなどの菓子類に、黄色5号がよく利用されています。
黄色5号を単独で使用した場合には、上の写真のように、黄色や橙色(オレンジ色)といった明るく爽やかなイメージの色を付けることが可能です。
また、沢庵(たくあん)やウニなどの色を、より明るく鮮やかに見せるために添加されることもあります。

他の黄色や赤色の着色料と混ぜ合わせて茶色を作り出し、チョコレートシロップ(チョコレートソース)の着色をする際にも活躍します。
黄色5号は、うがい薬やのど飴、錠剤、薬のカプセルなどの医薬品、指定医薬部外品などの色付けにも利用されることがあり、これには人間用だけでなく、動物用のものも該当します。

黄色5号の健康へのリスク

犬に対しては下痢や体重減少が確認されている

黄色5号がワンちゃんの健康に及ぼす悪影響については、2018年1月現在において、残念ながらあまり解明されてはいません。
しかし、ワンちゃんを対象とした黄色5号についての実験が過去に幾度か行われていますので、参考までにご紹介します。

ビーグル犬を2つのグループに分け、黄色5号をそれぞれの餌に5%と1%の割合で混ぜて与え続けたところ、下痢や体重の減少がみられたという実験結果が報告されています。
しかし、同じくビーグル犬を用いた実験では、2%の黄色5号を添加した餌を7年間与えても、目立った異常は確認されなかったという結果も得られています。
そのためJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)(※1)においては、黄色5号がワンちゃんに対して毒性を表さないであろう安全な量を、体重1㎏当たりにつき500mgと判断しているのです。

その他の動物実験においても、黄色5号の明らかな発がん性や遺伝毒性は確認されてはいません。

※1 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)・・・FAO(食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)によって設置された機関です。様々な国から科学者や専門家が集まり、添加物や動物に用いられる医薬品などのリスク評価を行っています。また、こうした評価をもとに、添加物の一日当たりの摂取許容量の設定も行っています。

注意欠如多動性障害を悪化させる可能性について

前述したような実験結果だけを理由に、「黄色5号は、犬にとって健康被害の危険性の低い着色料である」と言い切ることはできません。
人間での事例ではありますが、黄色5号によってアレルギーを起こした人がいるという報告もあります。

さらに心配なのは、黄色5号を摂取することによって、注意欠如多動性障害(注意欠陥多動性障害/ADHD)の悪化を招くリスクが懸念されていることです。

黄色5号は、ヨーロッパ諸国を始め、アメリカ合衆国やカナダでも使用が認められている着色料です。
しかしイギリスにおいては、黄色5号を使用した食品類には、「子どもの注意力や行動に悪影響を与える可能性がありますよ」という旨を表示しなければならないと義務化されています。
これは、黄色5号の入った食品を摂取した人間の子どもに、注意欠如多動性障害の症状の悪化が見られたことから、法整備が行われたものです。

注意欠如多動性障害は、人間特有の障害のように思われがちですが、まれにワンちゃんにも同様の症状を持つ子が存在するといわれています
発達障害の一種である注意欠如多動性障害の人の特徴としては、

  • ひとつの物事にじっと集中することや、集中を維持することが不得意(反対に、集中しすぎて疲れ切ってしまうこともあります)
  • うっかりミスや無くし物、忘れ物が多い
  • 身の周りの整理整頓が苦手
  • 思ったことを正直にそのまま口に出してしまう
  • 怒りを抑えることが不得手で、時に感情が爆発してしまうことがある

などがみられます。

ワンちゃんの場合には、

  • 静かな環境下でもじっとしたり、寝ていることができない
  • 常に元気すぎるほどに動いたり遊んだりしており、落ち着きがない
  • 家具や身の周りの小物類をかじって破壊する
  • 人や他の動物に対して反射的に飛び付いたり、吠えたりする
  • さまざまな物に興味をひかれ過ぎてしまい、散歩が上手くできない
  • よだれが異常に多く流れる
  • しっかりと食事をしているにも関わらず、痩せている
  • 通常の犬と比べて心拍数が速い

など、行動面でも健康面でもさまざまな症状が現れます(もちろん、これら全ての症状が現れるとは限りませんし、その他の症状のあるワンちゃんもいるでしょう)。
こうしたワンちゃんの行動は、ハイパーアクティブ(過活動)とも呼称されます。

上記のようなワンちゃんの問題行動は、運動不足やストレス、しつけが充分になされていないことなどから発生しているケースも多くあります。
また、よだれや心拍数増加などは、何かしらの病気の症状である可能性もあるでしょう。
もしもそうであれば、散歩の時間や飼い主さんと触れ合う時間を増やす、しつけをしっかりと行う、病気を治療するなど、ワンちゃんの状態に合った適切な対応によって改善することが可能です。
しかし一部のワンちゃんにおいては、生まれつきの注意欠如多動性障害によって、こうした行動が引き起こされているケースもあると指摘されています。

現在のところ、黄色5号がワンちゃんの注意欠如多動性障害にも悪影響を及ぼすのかどうかは、判明していません。
しかし、さまざまな添加物の健康被害や薬の副作用などには、人と犬に共通してみられる症状が多く存在します。
何も根拠が得られていない現段階では、「黄色5号は、ワンちゃんの注意欠如多動性障害に対しては影響しない」と楽観的に考えることは難しいでしょう。
白黒がハッキリと付くまでは念のため、注意欠如多動性障害が疑われるワンちゃんに、黄色5号を与えることは控えた方がよさそうです。

まとめ
黄色5号は、食品をさまざまな色に演出することができ、熱や光によっても劣化しにくい便利な着色料です。
しかし、ワンちゃんや人間にどのような悪影響を与えるのかが明確になっていないという、心配な点もあります。

石油由来の合成添加物、植物や生き物を使った天然添加物のどちらであっても、それまで一般的に広く使用されていたものが、発がん性などを理由にある日突然使用禁止となることはよくある話です(※2)。
黄色5号にそういう日が来るのかは分かりませんが、万が一ハッキリとした毒性が分かった時に後悔しないように、ドッグフード選びは慎重に行った方がよいでしょう。

※2 セイヨウアカネ(アカネ科の植物)の根から得られるアカネ色素は、ジュースや加工肉などに添加されていた着色料ですが、発がん性があることが判明し、2004年に使用が禁止されました。