ドッグフードの栄養素「ビタミンB2」の働きと欠乏の危険性

ドッグフードの栄養素「ビタミンB2」

「発育のビタミン」という異名もあるビタミンB2(リボフラビン)は、その名の通りワンちゃんの健やかな成長には必要不可欠な栄養素であり、エネルギーの産生にも深くかかわっています。
ここではビタミンB2の具体的な体内での働きから、欠乏した時に出る症状、どのような食べ物に多く含まれているのかなど総合的にご紹介していきたいと思います。

エネルギーの代謝を助けるビタミンB2

ビタミンB2(リボフラビン)は、1926年にアメリカで牛乳の中から発見され、1933年にドイツで初めて分離に成功した栄養素です。
既知の栄養素であったビタミンBと似た作用が確認されたことから、2番目に発見されたビタミンBという意味で「ビタミンB2」と呼ばれるようになりました。
ビタミンB2の作用には、主に以下のようなものが挙げられます。

三大栄養素のエネルギー代謝を助ける

ビタミンB2は炭水化物や脂質、タンパク質(これらを三大栄養素といいます)が代謝する際に重要な働きをします。
上記の3つの栄養素はワンちゃんの体内に取り込まれると、酵素による分解を経てエネルギーへと変換されるのですが、この時に酵素の一種であるフラビンという物質が使われるのです。
このフラビンを助けて燃焼をスムーズに効率よく行えるように補助する成分がビタミンB2です。
ビタミンB2の科学名は「リボフラビン」といいますが、それはこうした作用から名付けられました。

ビタミンB2は特に脂質のエネルギー変換時に多く消費され、不足すると脂質が燃えにくくなります。
脂質は効率の良いエネルギー源です。
普段から運動量の多いワンちゃんほど、ビタミンB2をしっかりと摂取させ、多くのエネルギーを生み出せるようにしてあげる必要があります。
また、太り気味でダイエット中のワンちゃんにも、積極的に摂らせてあげたい栄養素です。

皮膚や被毛の生まれ変わりに関与する

ビタミンB2は、タンパク質が一旦アミノ酸に分解され、再度タンパク質へと合成される際にも働きます。
タンパク質はワンちゃんの皮膚や被毛、爪を構成します。
これらの生まれ変わりや成長を助ける作用を持っているのがビタミンB2なのです。

ビタミンB2をしっかりと摂取させることで、ワンちゃんの被毛のツヤや潤いが保たれ、爪や皮膚が丈夫になる効果が期待できます。
こうした作用を持つことから、ビタミンB2には「発育のビタミン」という別名もあります。

さらに、ビタミンB2という名前が付く前には、「成長」や「発育」を意味する英語である「growth」の頭文字を取って「ビタミンG」とも呼ばれていました。
他にもビタミンB2には、ケガからの回復を早めたり、目の粘膜を強化して白内障などの疾患からも守ってくれる働きもあります。

過酸化脂質の量を減らす

ビタミンB2には、生成されてしまった過酸化脂質を減らす作用も確認されています。

過酸化脂質は、「グルタチオンペルオキシダーゼ」という酵素によって分解され、アルコールと水へと変わります。
役目を終えて働けなくなったグルタチオンペルオキシダーゼを再び活性化させ、過酸化脂質を消去する作用を持たせるのがグルタチオン還元酵素です。
ビタミンB2はこの還元酵素の働きをサポートしています。

過酸化脂質は、脂肪が酸素によってサビついた状態を意味します。
過酸化脂質ができると、連鎖的に体内のいたる所が酸化しはじめ、老化の促進や発ガン、動脈硬化の原因となる可能性があります。
ビタミンB2はこのやっかいな過酸化脂質から、ワンちゃんの体を保護してくれているのです。

ビタミンB2は栄養の強化を目的としてドッグフードへ添加されている他、その黄色い色を利用して、フードや犬用おやつの着色料としても用いられています。
パッケージの原材料欄には「ビタミンB2」と「リボフラビン」、どちらの記述もみられます。

ビタミンB2の欠乏症と過剰症

皮膚への影響の他、さまざまな症状が出る欠乏症

ワンちゃんは、腸の中に住んでいる細菌によってビタミンB2を作り出すことが可能です。
しかし、抗生物質の長期連用により腸内細菌が減ってしまうと、合成量が減ってしまいます。
この場合はビタミンB2のみではなく、細菌によって作られる他のビタミンB群などの栄養素も欠乏していることが多いです。
ビタミンB2が不足した際には、ワンちゃんに以下のような症状が現れます。

  • 皮膚炎、口内炎
  • 皮膚のかゆみ
  • 食欲不振、体重減少
  • 光線過敏症(日光によるアレルギー症状)
  • 筋肉の衰え
  • 不整脈
  • 成長の遅れ(子犬の場合)
  • 奇形を持った子犬が産まれやすくなる(妊娠中の母犬のビタミンB2欠乏による)

エネルギー消費が激しく、皮膚の新陳代謝も活発な子犬は、成犬よりも多くのビタミンB2を必要とします。
授乳期の子犬は母乳からビタミンB2を補給するため、母犬にはビタミンB2を多く摂取させることが大切です。
手作りフードであれば、ビタミンB2が多い食材を、いつもより積極的に使ってみましょう。
市販のドッグフードの場合には、授乳期の母犬用に栄養の調整がされたものを使うと安心です。

速やかに排泄されるため、過剰症は起こりにくい

ビタミンB2は過剰に摂取しても素早く尿で排出されます。
そのため体内に長く留めておくことができないというデメリットはありますが、多く蓄積して健康被害を及ぼすリスクも低いというメリットもあるのです。

人に対して行われた実験において、大量摂取をしても健康への悪影響は確認されなかったというデータも多く出ており、ビタミンB2自体の安全性も高いといわれています。
ビタミンB2を多く摂取させると、ワンちゃんの尿が濃い黄色になる場合がありますが、これは「ビタミンB2の色」であり、病気ではありません。

ビタミンB2の上手な補給方法と、含有量の多い食材

ビタミンB2の効率的な摂取方法

ビタミンB2は動物性食品に多く含有されている成分ですので、肉類や魚を摂取する機会の多いワンちゃんにとって、補給しやすいビタミンです。
反対に植物性食品にはあまり含まれていません。

しかし、ビタミンB2を作り出す腸内細菌は、繊維質をエサにして増殖します。
繊維質は植物性食品に多く含まれているため、野菜や豆類を適度に摂取させることは、結果的にビタミンB2の合成量アップへと繋がるのです。

水溶性で、尿と一緒に排泄されやすいビタミンB2は、毎日のコツコツとした補給が非常に大切です。
取り過ぎたビタミンB2は速やかに出て行ってしまうため、一度にたっぷりと与えても無駄になってしまいます。
1日数回(朝と晩など)に分けて与えるようにしましょう。

水に溶けやすいということは、調理時に使用する水にも流出しやすいということです。
ビタミンB2を含む食材を茹でたり煮たりした場合には、ゆで汁ごとワンちゃんに与えることが、栄養素を無駄なく摂取させるためのポイントです。
ビタミンB2は熱に強いため、加熱による損失はあまり心配しなくても大丈夫でしょう。
しかし光には弱いので、食材やドッグフードを保存する時には暗所に保管することが大切です。

ビタミンB2は肉や魚に多く含まれる

以下に、ビタミンB2の含有量の多い食材をグラフによりご紹介します。
ビタミンB2を多く含む肉・魚類と、その他の野菜や加工食品に分けて掲載しました。
いずれもワンちゃんが食べても健康上問題のない食材だけを選んであります(ただし、アレルギーのある食品にはご注意ください)。

まずは、肉類と魚についてです。
ビタミンB2は、各種レバーに多く含有されていることが分かります。
レバーはビタミンA(レチノール)やビタミンB1、葉酸、吸収性に優れたヘム鉄なども豊富で、少量でもさまざまな栄養素が摂取できる優れた食材です。

しかし栄養素の豊富さゆえに、食べ過ぎるとビタミンAの過剰症などのリスクもあります。
ビタミンA過剰症となると、筋肉痛や脚の痛み、脱毛、食欲不振など、ワンちゃんに多くの症状が出てきます。
毎日連続して、または一度に大量にレバーを与えることは避けましょう。

ビタミンAの過剰症などに関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
→f2(1)ドッグフードの栄養添加物(ビタミンA)

またビタミンB2は、反芻動物()の胃袋であるトライプにも多く含まれています。

私たち人間は、洗浄や漂白を経てキレイになった家畜の内臓(ホルモン)を食べます。
対してワンちゃん用のトライプは、消化途中の植物が残っている状態の「グリーントライプ」と呼ばれる胃袋です。

グリーントライプにはビタミンB2以外のビタミンB群や必須脂肪酸、カルシウム、リンなどの豊富な栄養素が含まれており、ワンちゃんの食い付きも大変良いといわれています。
グリーントライプの入ったドライフードやウェットフードもありますし、トライプのみの缶詰も販売されています。

まだ日本ではあまり一般的ではないグリーントライプは、使われているフードも高価格帯の商品が多いです。
したがって、「毎日継続して与えることは難しい」と思われる飼い主さんもいらっしゃると思います。
しかし、フードローテーションのひとつとしてや、ドッグフードのトッピングに使ってあげると、ワンちゃんが大喜びすることでしょう。

※反芻動物・・・牛や鹿、羊など、4つに分かれた胃袋を持った偶蹄目に属する動物の総称です。これらの動物には、一度飲み込んだ食物を再び口の中に吐き戻して噛み、再び飲み込んで消化するという習性があり、この行動を「反芻」といいます。

こちらは卵や野菜、加工食品に含まれるビタミンB2の量を比較した表です。
卵や乳製品は動物性食品であるため、やはりある程度のビタミンB2を含んでいます。
豆類にもかかわらず納豆にビタミンB2が多い理由は、納豆菌が生成しているためです。
納豆の原料となる大豆には0.3mg程度しか含まれていませんが、納豆菌で発酵させることにより、0.56mgまでビタミンB2量が増えるのです。

まとめ
胎児の体の形成から、シニア犬に多い白内障の予防まで、ビタミンB2はワンちゃんの一生を通じて欠かすことのできない大切な栄養素です。
肉類や卵、チーズなど、ビタミンB2はワンちゃんの好みやすい食材に豊富に含まれているため、補給をすることも簡単にできます。
ビタミンB2が欠乏して愛犬に健康被害が出ないよう、こまめに摂取させてあげましょう。