ドッグフードの原材料「グリーンピース」の栄養素と犬への与え方

ドッグフードの原材料「グリーンピース」

グリーンピース(グリンピース)は、冷凍ものや缶詰が年間を通して売られており、手に入りやすい食材です。
タンパク質やビタミン類も豊富で、豆のサイズも小さく食べやすいため、ワンちゃんに与えるには非常に適しています。
ここでは、ワンちゃんの健康に役立つグリーンピースの栄養素、ドッグフードへの使用の傾向、与える際の注意点はあるのかなどについて、詳しくみていくことにしましょう。

グリーンピースの旬と見分け方

マメ科エンドウ属に分類されるグリーンピースは、別名を「実エンドウ」ともいいます。
別名からピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、グリーンピースが完熟するとエンドウ豆と呼ばれます。さらに、グリーンピースよりも若いものがサヤエンドウです。
エンドウ豆の芽は、中華料理に頻繁に使われ、日本においても知名度が上がっている豆苗(とうみょう)です。
こうしてみると、エンドウ豆は熟度や部位によってさまざまな名前で呼び分けられ、料理に幅広く利用されていることがわかります。

グリーンピースの日本国内での収穫量ナンバーワンは和歌山県で、国内の栽培量の50%以上を占めています。その他、鹿児島県や福岡県、熊本県など九州地方での栽培も盛んです。
グリーンピースの旬は4月から6月ですが、3月頃からスーパーなどに出回ります(産地によって若干時期のずれがあります)。
寒さに弱いため、夏を過ぎると生のものは店頭から姿を消してしまいます。
旬のグリーンピースは、缶詰などよりも香りが強く味も濃いため、野菜売り場に売られているのを見かけたらぜひとも手に入れておきたい食材です。
旬のもののほうが栄養価も高い傾向にあるため、ワンちゃんに効率的に栄養を摂取させるには最適です。

新鮮でおいしいグリーンピースの見分け方は、サヤに注目してみてください。
サヤが全体的にふっくらとみずみずしく、「グリーンピース」という名前の通り、キレイな緑色をしているものが良質とされています。
サヤが白っぽく乾いていたり、黒く変色しているものは避けたほうがよいでしょう。

タンパク質や炭水化物、ビタミン類が豊富

グリーンピースの100g当たりの栄養素

グリーンピースは他の野菜類と比べてタンパク質や炭水化物、糖質を多く含んでいることが特徴です。
そのため、カロリーも高めとなっています。
熟したグリーンピースであるエンドウ豆は、昔の日本では穀物の代わりとして食べられていた時期もあったというほどに、エネルギー源として重宝されていたのです。

豊富な不溶性食物繊維

グリーンピースは食物繊維が豊富なことでも知られています。
食物繊維の総量は100g中7.7gで、特に不溶性食物繊維の割合が高いです。

不溶性食物繊維は水に溶けず、腸内の水分を吸収して膨らむ作用があります。そのため、便のかさが増して排泄しやすくなるのです。
さらには腸内の移動を通じて腸壁を刺激し、腸の動きを良くします。
また、ワンちゃんの体に不要な物質(老廃物や有害物質)を取り込んで便と共に排出するため、大腸がんの予防効果も期待できるのです。

必須アミノ酸であるリジン

グリーンピースには、必須アミノ酸のリジンも含まれています。
必須アミノ酸とは、「生きていくためには必要だけれども、ワンちゃんの体の中では作ることができないため、食品から摂取しなければならないアミノ酸」の総称です。

リジンはカルニチン()や各種ホルモン、酵素などの材料となり、タンパク質を効率よく吸収させるために重要な働きをする成分です。
リジンが足りないと、いくらタンパク質を摂っても体内でうまく利用できずに、無駄となってしまう可能性があります。
肉類を食べる機会が多く、タンパク質をたっぷりと摂るワンちゃんたちには特に重要な栄養素なのです。

またリジンは、脳の唯一の栄養源であるブドウ糖の代謝を促進します。
そのため、さまざまなことを勉強中の子犬や、しつけを入れている途中のワンちゃん、盲導犬や牧羊犬などの仕事を持っているワンちゃんなど、頭の冴えや集中力を要する環境に置かれている犬たちにとっても、大切な栄養素なのです。
リジンには、肝臓のダメージを和らげ、疲れを解消する働きもあります。

※カルニチン・・・脂肪を燃焼させてエネルギーを作り出す際に不可欠なアミノ酸です。ワンちゃんの体内ではリジンとメチオニン(こちらも必須アミノ酸です)から合成されます。

各種ビタミン類も多く含有している

β-カロテン(ビタミンA)やビタミンB1、そして豆類ではあまり含有されていないビタミンCなど、グリーンピースにはビタミン類も豊富です。

中でも多く含まれるのはビタミンB1です。
ビタミンB1はブドウ糖からエネルギーが合成される際に必要不可欠な栄養素です。
エネルギーが体内で生産されなければ、ワンちゃんの体や頭は働くことができません。
ビタミンB1は、動物が生きていくためにはとても重要な役割をになっているのです。

ビタミンB1は各種神経伝達物質の生成にもかかわっており、認知機能を正常に保つことにも欠かせません。
さらには、自律神経をコントロールすることにより、血圧の上昇を抑えたり尿の排泄を促すなど、ワンちゃんの体調を良好に維持するためにも役立っています。
ビタミンB1についての詳細はこちらをご覧ください。
 →ドッグフードのビタミンB1の働きとは?欠乏した犬はどうなるの?

市販のドッグフードと手作り食への利用

アレルギー対策用のドッグフードにも使われているグリーンピース

グリーンピースは、ワンちゃんの体に多くの栄養素を供給できる優れた食材であることから、市販のドッグフードにもよく利用されている食材です。
ドライフードやレトルトパウチ、缶詰などの形態を問わず、グリーンピースが入っているフードは店頭やネット通販のページなどで頻繁に見ることができます。
中には穀物アレルギーを持つワンちゃん向けに、穀類の代わり(炭水化物源)としてグリーンピースが使われているケースもあります。

ドライフードの場合は乾燥して粉々になっていますが、レトルトや缶詰に入っているグリーンピースは丸ごと粒のまま使い、煮崩れたものが入っていることが多いようです。
まれに、小さくカットされたグリーンピースを使っているフードもあります。

手作り食にグリーンピースを利用する場合の注意点

グリーンピースはサイズが小さめで、火を通すと柔らかくなりやすい食材です。
しかし、野菜類の消化が不得意なワンちゃんに与える場合には、少し気を付けたい点もあります。

まずは、加熱したグリーンピースの消化をさらに良くするために、細かく刻んだりつぶしたりしてから与えるようにしましょう。
しっかりと裏ごししてからポタージュ(スープ)にしてあげると、お腹に優しくなるだけでなく、グリーンピースの甘さが引き立ち、ワンちゃんの食欲増進に繋がることもあります。

また、豆の周りの薄皮も取り除きましょう
そのまま与えた場合には、便と一緒に出てきてしまうこともあります。

ワンちゃんに与える数は、1日2~3粒でやめておいたほうがよいという意見から、1日5粒程度までなら大丈夫だという意見までさまざまです。
これはワンちゃんの体の大きさや消化能力などによっても変わってくると思われますので、あげ始めは少ない量から始めて、愛犬の体調に異常(消化不良による下痢や嘔吐など)が出ないか様子をみるのがよいでしょう。

グリーンピースには脂溶性のβ-カロテン(ビタミンA)も含まれますが、ビタミンB群やビタミンCなど、水に溶けやすい(水溶性)の成分が多く含まれています。
これらは煮たりゆでたりする際に煮汁の中に溶け出していきますので、煮汁を捨ててしまうとせっかくの栄養素までも捨てていることになります
ワンちゃんの栄養摂取のためには、煮汁まで利用できるメニューにすることをオススメします。

まとめ
鮮やかな緑で料理を彩るだけでなく、栄養源としても優秀なグリーンピースは、ワンちゃんの健康にも有益な食材のひとつです。
豆類というとどうしても「消化性が悪い」というイメージがつきまとい、愛犬に与えることを敬遠してしまう飼い主さんも少なくありません。
しかし、きちんと火を通す、細かくする、皮は取り除くなどのちょっとしたことを心がければ、ワンちゃんにも安心して与えることができるのです。
また、市販のドッグフードに含まれているグリーンピースなら、そうした手間は不要です。

グリーンピースはワンちゃんが生きていく上で必ず必要な食べ物というわけではありませんが、豊富な栄養素とほのかな甘みなど、ワンちゃんの健康にも舌にもうれしい要素がいっぱいです。
市販のフードのトッピングや、普段の手作り食のレパートリーのひとつとして取り入れてみてはいかがでしょうか。