ドッグフードの原材料「豚(ポーク)」に含まれる栄養素

ドッグフードの原材料「豚(ポーク)」

ドッグフードの素材としても、私たちの食材としても、豚(ポーク)は非常にメジャーな存在です。
アミノ酸を豊富に含んだ質の良いタンパク質や、各種ビタミンB群を多く含み、疲労回復に役立つ豚肉は、活発なワンちゃんから体重が気になるワンちゃんまで、さまざまなタイプの子に嬉しい食材でもあります。
肉だけではなく、内臓や爪、耳までもが、犬用フードとして利用されるなど、「捨てる部分がない」とまでいわれる豚の、食材としての魅力をご紹介します。

豚の起源はイノシシ

豚の起源であるイノシシです。ガッシリとした体格ですが、胴体部分は短くコンパクトにまとまっています。
こちらは豚です。イノシシよりも多くの肉が採れるようにと、大柄で胴長な体形に改良されてきました。

イノシシ科イノシシ属に分類される豚(ブタ)は、その属性が示す通り、家畜化されたイノシシ(猪)を改良した動物です。
その昔人々は、野生のイノシシを狩って食べることで、タンパク質を摂取していました。
しかし、狩りによって食材を得る生活では、食料を安定的に供給することはできません。肉以外の動物性・植物性の食糧(貝や卵、木の実など)も、収穫量は季節や天候に左右され、いつも一定の量が手に入るわけではないのです。
こうした状況から抜け出そうと、人々は次第に、イノシシを家畜として飼い、安定した食糧確保に役立てるようになります。
虫やキノコから人の排泄物に至るまで、何でも食べて自らの栄養としてしまうイノシシは、飼育するためのエサの心配も少なく、家畜化するのに非常に適した動物でした(※1)。
そのイノシシから、さらにたくさんの肉を採ろうと、長い年月をかけて改良を続けてきた結果、豚が誕生したのです。

豚は、食べ物の消化吸収能力に優れ、イノシシよりも成長が早いという特徴があります。
また、より多くの肉が採れるようにと、イノシシよりも胴が長く、モモや尻、背中の筋肉がたくましくなるようにと改良されてきました。
現在(この記事を執筆しているのは2018年3月です)、豚の出荷時期は、体重が110kg程度になる生後6ヶ月頃が目安となっています。
イノシシをこのサイズに成長させるには、倍以上の月日が必要ですし、そもそもここまで大きくならない個体も多く存在します。

※1 イノシシが家畜として飼いやすい理由は、他にもあります。まず、イノシシは妊娠期間が短く、1度の出産で4~5匹という多くの子どもを産みます。そのため、時間をかけずに増やすことができるのです。また、群れで行動する習性を持つため、狭い敷地内で飼ってもイノシシ同士のトラブルやストレスが少なく、健康的に飼育することができました。

豚は鳴き声以外に捨てるところがない?

「豚は、鳴き声以外に捨てる部分がない」とは、日本の中でも豚肉の消費量がトップクラスの沖縄県の言葉です。
その言葉通り、豚はその肉はもちろんのこと、内臓や骨、血液、耳、尻尾までもが食材として利用されます(※2)。

※2 厳密には、頭蓋骨や爪、リンパなど、鳴き声以外にも食用とされない部位がごく一部存在します。しかしこれは、人間用の食材としての話です。豚の爪はドッグフードとして活用されているため、豚はワンちゃんにとっては正に「捨てるところのない」食材です。

ドッグフードの原材料として頻繁に使用される豚の部位には、肉を始め、舌(タン)、心臓(ハツ)、肝臓(レバー)、耳、爪などが挙げられます。
豚の肉(ポーク)は、ワンちゃんの主食となるドライフード、ウエットフード問わず、使用されています。
メインのタンパク源として、豚肉単独で利用されることもありますが、牛肉や鶏肉、ラム肉などその他の肉類と組み合わせて使用されることのほうが一般的です。
また、犬用ジャーキーやチップスなど、ワンちゃんの喜ぶおやつとしても、豚肉は幅広く利用されています。

豚の肉以外の部位が使用されているフードの種類と特徴は以下の通りです。

ドッグフードに利用される豚の部位と特徴
使用部位 主な用途 特徴

(タン)
  • ウエットフード
  • ジャーキー
  • チップス
など
15cm程度の長さを持つ豚の舌は、舌先よりも喉に近い根もとの方に脂肪が多めに含まれています。
とはいえ、全体的に脂質は控えめで、見た目に反してさっぱりと食べられることが特徴です。
ビタミンA(※3)や鉄分、タウリン(※4)を多く含有します。
舌軟骨(したなんこつ/ぜつなんこつ)と呼ばれる希少部位である、喉仏から舌の根もとに存在する軟骨には、コラーゲンが多く、犬用のチップスなどのおやつに利用されています。
心臓
(ハツ/こころ)
  • ウエットフード
  • ジャーキー
  • フリーズドライ
など
筋肉からなる心臓は、脂質が少なくあっさりとした味わいが特徴です。
筋繊維が豊富な心臓は、肉とは異なるコリっとした独特な歯ごたえを持ちます。
ビタミンB1やB2の他、ナイアシン(※5)やパントテン酸(※6)など、栄養素も豊富です。
豚の心臓の重さは300g前後であり、他の内臓肉と比べて安価に購入できます。
肝臓
(レバー/きも)
  • ドライフード
  • ウエットフード
  • ジャーキー
  • フリーズドライ
など
1頭の豚から採れる肝臓は、およそ1~1.5kgもの重さになります。
肝臓は豚肉の体の中で、最もビタミンAを多く含む部位です。また、吸収性に優れるヘム鉄(※7)やビタミンD(※8)も豊富です。
人間を含む多くの動物は、紫外線を浴びることで、体内でビタミンDの合成を行っています。
しかしワンちゃんは、原料となるコレステロールが少ないため、十分なビタミンDを合成できません
肝臓はワンちゃんのビタミンD補給にピッタリです。
しかし、肝臓には独特の濃厚な味わいがあり、それを美味しいと感じるかクセが強いと感じるかは、それぞれの嗜好によって異なります。
万人受けする風味ではないこと、また、傷むのが速いことが、肝臓のデメリットです。
  • 乾燥させた耳をまるごと
  • 乾燥させた耳をスライスしたもの
1枚200~300g程度の重さになる耳は、乾燥し、毛を抜いたものがそのまま売られていることが一般的です(中には細切りにしたものもあります)。
程よい硬さを持つ豚耳は、ワンちゃんの鋭い歯や咀嚼力をもってしても噛み切りにくく、食べ終わるまでには時間がかかることでしょう。
そのため、ストレス解消や満足感アップに繋がるといわれています。
大部分が軟骨と皮から構成されている耳には、ゼラチン質が豊富で、ワンちゃんからも人気の高い部位です。
  • 乾燥させた爪をまるごと
焼いて殺菌しただけの大きな豚の爪です。ワンちゃんのお留守番時などに長時間噛めるおやつとして利用されています。
コラーゲン(※9)をたっぷりと含み、牛に比べてヒヅメ特有のニオイが弱いことが、豚の爪のメリット(犬にとってはデメリット?)です。
また、よく噛むことによって、歯磨き効果が期待できるとされます。
しかし、爪はかなりの硬さを持つため、歯を痛めるリスクがあるとして、犬に与えることを推奨しない獣医さんも多いです。

※3  ビタミンA・・・正常な視力を保ち、暗闇で物を見る際にも欠かせない栄養素です。粘膜の保護という役割もあり、ウイルスや細菌類による感染症からワンちゃんをガードしてくれます。
ビタミンAは、動物性食品に多いレチノールと、植物性食品に多いβ‐カロテンに分けられます。

※4 タウリン・・・生物の体の恒常性をキープする栄養素です。具体的には、血圧の異常な上昇や下降を抑制したり、気温の低下とともに体温が下がりすぎることを防ぐなど、体調を常に一定の状態に保ってくれます。

※5 ナイアシン・・・ビタミンB3とも呼ばれる、ビタミンB群に属する栄養素です。三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)のエネルギー変換時に働く酵素の補酵素となります。

※6 パントテン酸・・・セラミドの合成を促進し、外的な刺激から皮膚を守り、潤いを保つ働きを持ちます。
ビタミンの仲間であり、「ビタミンB5」とも呼ばれます。

※7 ヘム鉄・・・タンパク質と結合した状態の鉄分で、動物性食品に多く含まれています
。鉄はもともと吸収性に難のある栄養素ですが、ヘム鉄は30%前後という高い吸収率を誇ります。植物類に含有される非ヘム鉄の吸収率は、わずか5%程度です。
鉄の吸収性は、含まれる食材、一緒に摂取する他の栄養素などによっても変化します。

※8 ビタミンD・・・カルシウムとリンの吸収率をコントロールし、丈夫な歯や骨をキープするために働きます。
上の表でご説明した通り、ワンちゃんはビタミンDの体内合成量がわずかであるため、食べ物からの摂取が不可欠です。

※9 コラーゲン・・・皮膚の弾力性や被毛のツヤを保ち、頑丈な骨や爪を作るために必要なタンパク質の一種です。

上記の各種栄養素についての詳細は、それぞれのページでご確認ください。
ドッグフードの栄養素「ビタミンA」の働きとは?過剰摂取に注意
ドッグフードの栄養素「タウリン」の健康効果とは?
ドッグフードの栄養素「ナイアシン」の働きとは?欠乏は命の危険も!
ドッグフードの栄養添加物「パントテン酸カルシウム」の働き
ドッグフードの栄養添加物「硫酸鉄」の働きは?不足するとどうなる?

このように、同じ豚から採れる食材でも、部位によって含まれる栄養素や食感、味はさまざまです。
私たち人間と同様、ワンちゃんたちも食べ物に対する嗜好を持ちます。
「やわらかい食品を好んで食べる子」
「淡白な味には見向きもしない子」
など、ワンちゃんによって好みは異なります。
豚は多くの部位が食用となるため、愛犬の好みにフィットした部位が見つかりやすいでしょう。

豚肉を使ったドッグフードから摂取できる栄養素

ここでは、豚肉からワンちゃんが摂取できる栄養素についてご紹介します。
下の表は、豚肉の各部位(肩ロース、もも、ヒレ)と、豚の先祖ともいえるイノシシ(※10)に含まれる主な栄養素を一覧化したものです。
この表を参照しながら、豚肉がワンちゃんの健康にとって、どのように有益なのかをみていきたいと思います。

※10 イノシシの肉を使用したドッグフードも販売されています。イノシシ肉には、ヘム鉄の含有量が多い、青魚に多く含まれる脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれる、などの特徴があります。詳しくは、こちらのページでご確認ください。→ドッグフードの原材料「猪(ワイルドボアー)」の栄養素と注意点

豚肉の各部位と猪肉との、主な栄養素含有量比較(可食部100g当たり)
栄養素 単位 豚(肩ロース) 豚(もも) 豚(ヒレ) イノシシ
エネルギー kcal 253 183 115 268
タンパク質 g 17.1 20.5 22.8 18.8
脂質 g 19.2 10.2 1.9 19.8
ビタミンB1 mg 0.63 0.9 0.98 0.24
ビタミンB2 mg 0.23 0.21 0.27 0.29
ビタミンB6 mg 0.28 0.31 0.42 0.35
オレイン酸 mg 7600 3900 530 8500
タンパク質

豚肉をドッグフードに使用する一番の目的は、タンパク質の供給源とするためです。
豚肉は部位を問わず、高いタンパク質含有を誇りますが、中でもヒレ肉には多くのタンパク質が含まれています

ヒレ肉(フィレ肉、ヘレ肉とも呼ばれます)は、豚肉の中で2%程度しか存在しない希少な部位で、背骨の内側に付いています。
その他の豚肉の部位や猪肉と比べ、非常に脂肪量が少ないことも特徴です(100g当たり1.9g)。
カロリー量も肩ロースの半分以下と少なくヘルシーなため、体重コントロールが必要なワンちゃんにもおすすめです。
ヒレ肉はそのヘルシーさ故に肉らしいコクに欠け、食べる人によっては味気なさを感じる部位でもあります。

タンパク質は、さまざまなアミノ酸が結合したペプチドが、多数組み合わさって構成されています。
食べ物として摂取されたタンパク質は、一旦ワンちゃんの体内でタンパク質→ペプチド→アミノ酸という順番でバラバラに分解されていき、再度、各々の体にピッタリとフィットしたタンパク質として作り変えられるのです。
こうして生まれ変わったタンパク質は、ワンちゃんの肉や内臓、血液や被毛など、体を構成するさまざまな部位の構成に利用されます。

このタンパク質の再合成には、多くのアミノ酸が関わっています。
中でも必須アミノ酸は、動物が必ず食べ物などから摂取しなければならないアミノ酸として位置付けられているものです。
ワンちゃんにとっての必須アミノ酸は10種類あり、いずれも体内では合成不可能、または微量しか作り出すことができず、必要量には足りないものばかりです。
この必須アミノ酸を種類、量ともに全て網羅した食品は、スムーズなタンパク質合成を可能にします。豚肉は正にこの条件に当てはまる食材なのです。

食品の必須アミノ酸の含有量や、タンパク質とのバランスの程度を表す指標に、アミノ酸スコア(Amino Acid Score)があります。
アミノ酸スコアが100に近ければ近いほど、必須アミノ酸が豊富に含まれている「質の良いタンパク質」を含む食品であると判断されるのです。
反対に、必須アミノ酸の含有量が少なかったり、偏りがある場合には、いくらタンパク質がたっぷりと含まれていでも、「タンパク源としては価値の低い」食材となり、アミノ酸スコアも低くなります。
豚肉、そして豚レバーのアミノ酸スコアは最大値である100です
牛肉や鶏肉、鶏レバー、魚肉など、他にもアミノ酸スコアが100となる食材はありますが、それらと並んで、豚肉も安心してメインのタンパク源として愛犬に与えることができる食材です。

ビタミンB1(チアミン)

豚肉は全体的にビタミンB1の含有量が多い食材ですが、特にもも肉、ヒレ肉にたっぷりと含まれています
豚のもも肉は、その名の通り、足の付け根付近のももの肉であり、別名「まる」や「うちひら」などとも呼ばれ、ハムの原料としても知られています。
脂肪が少なく筋肉が多いにもかかわらず、柔らかくうま味が強い部位です。さまざまな料理にも合い、おいしく頂けるため、人間用の食材としても重宝されています。

ビタミンB1(チアミン)は、ブドウ糖を燃焼させてエネルギーを作り出す時に活躍する、水溶性のビタミンです。
ブドウ糖は、ワンちゃんの頭をしっかりと働かせるために不可欠な栄養素です。

また、体内でエネルギーが発生する際には、副産物として乳酸が生まれます。
この乳酸が蓄積すると、疲労感が強くなり、いわゆる「バテた」状態になってしまいます。
ビタミンB1にはこの乳酸を処理し、エネルギー源として再利用できる状態にしてくれる働きがあるのです。
乳酸がエネルギーとなり、ワンちゃんは再び元気に活動することが可能となります。
「豚肉は疲労回復に効果的」とよくいわれますが、豚肉にビタミンB1が多く含有されていることが理由です。

ある実験においては、ワンちゃんの夏バテ解消にもビタミンB1が役立ったというデータも得られています。
走ることや散歩が大好き、フリスビーやアジリティーをやっている、といった活動的なワンちゃんたちには、積極的に摂取させたいビタミンです。

ビタミンB1の詳しい働きや、欠乏症・過剰症などについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。→ドッグフードのビタミンB1の働きとは?欠乏した犬はどうなるの?

ビタミンB2(リボフラビン)

ご先祖様であるイノシシの肉には及びませんが、豚肉にも多くのビタミンB2が含有されています。

ビタミンB2 は、正式には「リボフラビン」といいます。
「リボフラビン」の「フラビン」とは、栄養素(タンパク質、炭水化物、脂肪)が代謝される際に働く酵素の名前です。
ビタミンB2は、このフラビンの働きを助け、栄養素を効率よく燃焼させてエネルギーへと変換するためのサポート役を担っています。

特に、脂質が燃える際には多くのビタミンB2が必要となります。
ビタミンB2をしっかりと摂らせることは、ワンちゃんの体内に脂肪が蓄積されることを抑えることにも繋がります。
ダイエットが必要なワンちゃんには特にうれしい栄養素です。

また、タンパク質の項目でご説明した、タンパク質の再合成にもかかわっています。
タンパク質の再合成がきちんと行われることによって、ワンちゃんの皮膚や爪が丈夫になり、美しい毛並みが保たれます。
さらに、新陳代謝の活発な子犬の正常な発育にも、ビタミンB2は欠かせません。
こうした働きを持つことから、ビタミンB2は、英語の「growth」(発育、成長の意味)の頭文字が当てられ、「ビタミンG」と呼ばれていた時代もありました。

ビタミンB2に関する詳細は、こちらからご覧ください。→ドッグフードの栄養素「ビタミンB2」の働きと欠乏の危険性

ビタミンB6(ピリドキシン)

ビタミンB6(ピリドキシン)は、タンパク質がアミノ酸に分解され、再度タンパク質へと生まれ変わる一連の流れに関与する、多くの酵素の働きを手助けする補酵素です。
ワンちゃんは元来肉食であったため、雑食性を獲得した現在においても、多くのタンパク質を必要とします。アレルギーなどがない限り、ほとんどのワンちゃんがメインとして肉や魚を食べていることでしょう。
タンパク質をたくさん摂取しているワンちゃんたちは、それを処理するために酵素もフル稼働します。
ビタミンB6をきちんと摂取させて酵素の働きを応援し、ワンちゃんの体のスムーズな代謝を目指しましょう。

また、ビタミンB6は、タウリンやカルニチン(※11)の合成、セロトニン(※12)の原料となるなど、他の栄養素にも影響を与えます
ビタミンB6の不足は、連鎖的に他の栄養素の不足も招くため、注意が必要です。

ビタミンB6の働きに関しては、こちらで詳しくご説明しています。→ドッグフードの栄養素「ビタミンB6」の働きについて知ろう

※11 カルニチン・・・ビタミンと同じような作用を持つにもかかわらず、ビタミンの定義には該当しない「ビタミン様物質」のひとつです。
効率的な脂肪燃焼に関与する栄養素です。

※12 セロトニン・・・神経伝達物質の一種であるセロトニンには、リラックス効果や快眠に導く働き、満腹感を感じやすくして過食を抑制する作用などがあります。

オレイン酸

オレイン酸は脂肪酸の一種です。
上記の表では、イノシシ肉に最も多く含有されていることが分かりますが、豚肉肩ロースにもかなりの量のオレイン酸が含まれています。
肩ロースは、豚肉の中では珍しく、いわゆる「サシ」と呼ばれる、脂肪交雑(※13)がみられる部位です。
適度な脂肪のお蔭で、豚肉のコクがしっかりと楽しめます。
表で比較した3種類の豚肉の中では、最も動物の肉らしいうま味を持っている部位であるため、ワンちゃんの食い付きもよいのではないでしょうか。

※13 脂肪交雑・・・脂身が網目状に入った肉の状態です。一般的には、「霜降り肉」や「サシが入る」などと表現されます。

オレイン酸は、ワンちゃんの皮膚表面に住み着くアクネ菌やブドウ球菌の数を増やす作用を持っています。
アクネ菌といえば、ニキビの原因になる菌として有名ですが、それは過剰に増殖してしまった場合の話です。
生息数が適度であれば、皮膚を弱酸性に保ち、皮膚に悪さをする悪玉の細菌類が住みにくい環境に整えてくれるのです。

また、オレイン酸には、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の数はキープしたまま、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の数のみを減少させる作用もあります。
ワンちゃんは、悪玉コレステロールが過多となりやすい人間とは異なり、もともと善玉コレステロールが多く、脂質異常症とは縁遠い動物です(絶対に発症しないわけではありません)。

しかし、

  • シェットランドシープドック
  • シーズー
  • ドーベルマンピンシャー(いわゆる「ドーベルマン」)
  • ミニチュアシュナウザー
  • ロットワイラー

といった犬種は、脂質異常症になりやすい体質を受け継いでいるケースもあるため、他の犬種のワンちゃん以上に食事に気を遣ってあげる必要があります。

オレイン酸は脂質ですから、当然豚の脂肪にも多く含まれています。
豚の脂肪は「ラード」や「豚脂」などと呼ばれ、動物性の油脂として、ドッグフードに添加されることがあります。
豚脂を添加する目的は、嗜好性のアップやエネルギー、脂肪酸の栄養の供給です。
しかし豚の脂は、牛脂(タロー/ヘット)や鶏脂(チキンオイル)と比べると、残念なことにワンちゃんからの人気はいまひとつであるといわれています。

まとめ

ドッグフードの原材料としての豚肉について、ご紹介しました。
豚はさまざまな部位が食用とされる動物です。
ビタミンB 群に富み、ワンちゃんたちからの評判も上々な豚肉は、もちろん主食としてもフードに利用されますし、ホルモンや耳などは犬用おやつとして抜群の存在感を発揮します。
ちなみに一説によると、ワンちゃんが好みやすい肉類のトップ3は、1位・牛肉、2位・豚肉、3位・羊肉の順番であるといいます。
牛肉に次ぐ堂々の2位である豚肉を使用したフードは、ワンちゃんの食い付きアップも期待できることでしょう。