ドッグフードの原材料「栗」に含まれる栄養と犬に与える時の注意点

ドッグフードの原材料「栗」

秋になるとお菓子や料理に大活躍する栗(くり/クリ)は、女性を中心に人気の高い食品です。
甘いケーキや和菓子のイメージからは想像しにくいかもしれませんが、栗には美容効果が期待できるビタミンCや、エネルギー生成に必須のビタミンB1など、肌と体に嬉しい成分が豊富に含まれているのです。

もちろん栗の栄養素の恩恵はワンちゃんにも及びます。
品の良い甘さを持つ栗はワンちゃんが喜んで食べてくれるため、手作りフードやしつけのご褒美に取り入れやすい食材です。
栗の具体的な健康効果と、ワンちゃんにとって気を付けたい成分である「タンニン」などについてご説明します。

栗についての基礎知識

栗はナッツの一種

栗の旬は9月から10月にかけてです。
栗農家は日本各地にありますが、中でも茨城県、愛媛県、熊本県の3県で最も多く栽培されています。

栗は「鬼皮(おにがわ)」と呼ばれる茶色い色をした分厚く硬い皮に守られています。
鬼皮をむくと「渋皮」という薄い皮に包まれた黄色い種実が出てきます。
私たちやワンちゃんが食べるのはこの黄色い部分に当たりますが、これは栗の種子が発達したものなのです。
したがって、栗はナッツの一種とされます。

イモ類や豆類と比較すると、栗は比較的あっさりとした上品な甘味を持ちます。
これは黄色い種子の部分にアクが少なく、また、デンプン質の粒子が細かいことに由来するものです。
栗はサツマイモのように、収穫後に数日寝かせた方が甘味が増して美味しく食べることができます。
時間を置くことによって、栗に含まれるデンプン質が糖質へと変化するため甘くなるのです。

美味しい栗の選び方

栗は乾燥しやすく、水分が抜けると同時に味も落ちてしまいます。
ワンちゃんに栄養たっぷりの美味しい栗を食べてもらうためにも、購入時にはできるだけ新鮮なものを選んであげるようにしましょう。
良い栗の見分け方は以下の通りです。

  • 鬼皮の色が濃く、光沢感がある
  • 鬼皮にしっかりとしたハリがあり、凹みがない
  • 鬼皮に小さな丸い穴(虫に喰われた跡)が開いていない
  • 手に持った時に重みを感じる
  • 全体的にふっくらと丸みを帯びている

栗は4種類に大別される

栗は大まかにいうと、「日本栗」、「中国栗」、「アメリカ栗」、「ヨーロッパ栗」の4種類に分けられます。
それぞれの特徴は次の通りです。

種類 特徴 味や用途
日本栗 病気に強く、ほかの3種類よりもサイズが大きめです。
渋皮にはタンニン「(4. 栗を愛犬に与える際の注意点」を参照)が多く含まれ、はがれにくいというデメリットがあります。
高い香りとほんのりとした甘味を持ちます。水分を多く含むため、適度な粘り気があります。
中国栗 小ぶりで、渋皮が簡単にむけます。
日本では栽培されていません。甘栗として売られているものは中国栗です。
濃厚で強い甘味を持ち、焼き栗として利用されます。
ほかの種類と比べると、食感がやや硬めです。
アメリカ栗 1900年頃に発生した栗の樹木の病気により、絶滅寸前にまで追いやられました。現在ではほとんど見られず、日本でも作られていません。
小さめで、渋皮の離れ具合は良好です。
味はあまり良くないといわれています。
ヨーロッパ栗 病気や害虫に弱い種類です。
外的な影響を受けやすく、気候や風土の異なる日本では栽培することは難しいとされています。渋皮がむきやすいです。
煮崩れしにくく、マロングラッセや洋菓子などに使われます。
水分の含有量が少なく、粘り気がありません。

2017年現在、日本で一般的に購入できる栗のほとんどは日本栗です。
したがって、ここでは日本栗を基準とした栄養価などについてお話ししていきたいと思います。

栗の持つ健康効果

カロリーが高めの栗は、与え過ぎに要注意

栗には多くのデンプン質が含まれています。
そのためカロリーも高めで、ビタミン類にも富むため、手軽に栄養補給ができる優れた食品なのです。
縄文時代の遺跡からも数多くの栗が発見されており、当時から人々の重要なエネルギー源として食べられていたことがうかがえます。

気になるカロリーは、大きめの栗一粒当たり37kcal程度です。
少し小ぶりなものから中くらいのサイズの栗の平均は約27kcalとなります。
栗は甘い味がすることから、好んで食べるワンちゃんも多いことと思いますが、与え過ぎは太らせてしまうリスクがあります。
適量を食べさせることを心がけましょう。

一部の超大型犬を除けば、多くのワンちゃんは私たちよりも体が小さいため、必要とするカロリーも多くはありません。
参考までに、体重5kgの成犬の必要カロリー量(1日当たり)を記しておきます。

  • 去勢、避妊なし・・・421kcal (大粒の栗で約15個分)
  • 去勢、避妊済・・・374kcal (大粒の栗で約10個分)

ワンちゃんに一度に10個以上の栗をあげることはそうそうないかとは思いますが、けっして低カロリーな食べ物ではないということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

ワンちゃんに食べさせてもよい栗の数は、中型犬ならば1日に1個程度、小型犬ならばさらに少なく、大型犬の場合は大きさにもよりますが、3個から4個程度までが限度だといわれています。
カロリーの摂り過ぎを防ぐために、ワンちゃんに栗を与えた日のごはんは、いつもの量よりも少なめにしておくことをオススメします。

ビタミンCが豊富

ビタミンの中で栗が最も多く含んでいるものはビタミンCです。
栗100g 当たり33mgのビタミンCが含有されています。

豊富なデンプン質に守られているために、加熱しても破壊されにくいことが栗のビタミンCの特徴です。
ビタミンCは皮膚の構成成分であるコラーゲンの生成にかかわっており、ワンちゃんの皮膚が老化することを防いだり、傷の治りを速めてくれます。
また、ビタミンCには強い抗酸化作用があります。愛犬の体内で発生する活性酸素の量を減らし、細胞の酸化の害(ガン・高血圧・アレルギー・動脈硬化など)から保護してくれるのです。

そのほかの栄養素

ビタミンCのほかにも、栗にはさまざまな栄養素が含まれています。

栄養素 栗100g中の含有量 働き
ビタミンB1
(チアミン)
0.21mg 糖質をエネルギーへと変換する際に必要となる成分です。これにより、脳へとエネルギーが送られ、正常な働きが保たれています。
疲労物質である乳酸を処理するため、疲れを回復する作用もあります。
ビタミンB6 0.26mg 摂取したタンパク質が、体内のタンパク質へと合成されることを助けます。
また、赤血球や神経伝達物質の合成時に関わる栄養素です。神経の興奮を抑える働きも持ちます。
カリウム 420mg ワンちゃんの体を構成する細胞の水分調節を行います。体内の塩分を排出しやすくしてくれます。
また、筋肉の正常な動き(伸縮)には欠かせない栄養素です。
食物繊維 4.2g 便のかさを増したり、柔らかくする効果があり、便の排泄を促す作用があります。
腸内の老廃物を取り込み排出する働きもあるため、デトックスに効果的です。

栗を愛犬に与える際の注意点

最後に、栗をワンちゃんに与える際の注意点についてご説明します。

タンニンと食物繊維を含む渋皮は取り除く

栗の渋皮には、「タンニン」と呼ばれるポリフェノールの一種が含まれています。
このタンニンにはワンちゃんの便秘を誘発するリスクがあるため、愛犬に栗を食べさせる時には渋皮を取り除くことが大切です。

タンニンには強力な抗酸化作用や殺菌作用、体臭改善効果などがあることが分かっており、私たちやワンちゃんの健康に有益な面も持ちます。
しかし同時に、健康被害を起こしかねないデメリットも持ち合わせているのです。

タンニンは栗の渋皮に多く存在し、口にした時に渋味や苦味を感じる原因となる成分です。
栗はこのタンニンによって、種子が虫や鳥に食べられることを防いでいます。
「タンニン」とは、動物の皮をなめす(英語でtanningといいます)()時に用いられたことから名付けられました。

タンパク質と結合することによってこれを収縮させる「収れん作用」を持ったタンニンは、ワンちゃんの腸内でも同様に作用します。
具体的にいうと、腸の動き(蠕動運動)を弱らせることにより、便の出が悪くなってしまうのです。

この働きから、腸の痙攣を静めて下痢を止める目的でタンニンが利用されることもあります。
しかし、正常な便の状態の時にタンニンを摂取した場合、便秘となる危険性があるため注意が必要なのです。
特に日本栗は他の種類の栗に比べて、渋皮部分のタンニン含有量が多い傾向があります。

また、渋皮には食物繊維も多く含まれています。
適度な食物繊維は便通改善効果やデトックス作用を持ち、ワンちゃんの健康維持に効果的ですが、摂り過ぎは逆効果となります。
食物繊維を過剰に摂取した場合には下痢をしたり、反対に便秘となることもあるのです。

肉食寄りの雑食という食性を持つワンちゃんたちは、野菜などの繊維質の多い食べ物の消化吸収があまり得意ではありません。 繊維含有率の高い渋皮はワンちゃんにとっては特に消化しにくく、胃腸に負担をかけてしまいます。

栗をワンちゃんに与える際には渋皮をしっかりと取り除きましょう。
渋皮の外側にある鬼皮も、硬くてとても消化できるものではありません。
こちらもワンちゃんの食用に適していないことは言うまでもありません。

※なめす・・・植物から抽出した成分や人工的な薬品を用いて、動物の皮を変性させることです。皮の腐敗の防止、耐熱性や耐久性の向上などが目的とされます。なめされた皮は「革」と呼ばれ、衣類や鞄、財布などに加工されます。タンニンでなめされた皮は繊維が収縮するため、ハリを持った頑丈な革となるのです。

栗にしっかりと火を通し、小さくしてから与える

生の栗は硬く、ワンちゃんが消化しにくいため、しっかりと加熱をしてから与えるようにしましょう。
しかし、加熱した栗をそのまままるごと食べさせることも、喉や腸に詰まらせる可能性があり危険です。
栗をあまり噛まずに飲み込んでしまった際に、喉や食道をなかなか通り抜けないような、重たい感覚を経験したことのある人も多いのではないでしょうか。
ワンちゃんたちも同じです。
いくら犬が丸飲みを得意とする動物だといっても、大きなサイズの栗はやはり飲み込みにくいものです。
やわらかくした栗を小さくカットしたり、ペースト状に裏ごしするなどして、食べやすくしてあげる必要があります。

人間用に加工された栗は与えない

おせち料理の定番である栗きんとんや、甘い香りが食欲をそそる甘栗、シロップで煮込んだマロングラッセなど、栗を利用した美味しい料理は多く存在します。
しかし、これらには大量の糖分が使われているものがほとんどですし、商品によっては保存料や着色料などの添加物の心配もあります。

どれも甘いニオイがするので、飼い主さんが食べている時にワンちゃんが欲しがってジッと見つめてくる可能性も高いと思われますが、おねだりに負けて与えてしまわないないようにしましょう。
愛犬の健康を守るには、時に心を鬼にすることも大事です。

栗好きの人にはお分かりいただけるかと思いますが、栗は味付けをしなくても充分甘くて美味しい食べ物です。
生の栗をただ茹でるだけでも、ワンちゃんにとっては特別なごちそうに変身します。

まとめ
優しい甘さで犬たちからの人気も高い栗の健康効果と、愛犬に与える時の注意点についてご紹介しました。
美味しく栄養豊富な栗ですが、ワンちゃんの体質によってはアレルギーを起こしてしまうケースもゼロではありません。
特に与え始めは注意深く愛犬の体調を観察するようにしましょう。
カロリーオーバーにはくれぐれも気を付けて、愛犬に秋の味覚をおすそ分けしてあげてください。