ドッグフードの原材料「カンガルー」の栄養素は?衛生面は大丈夫?

ドッグフードの原材料「カンガルー」

カンガルーの肉はドッグフードのたんぱく源として利用されていることから、ワンちゃんの飼い主さんたちには比較的有名な素材です。 カンガルーはオーストラリアで「ルー」と呼ばれていることから、ある企業がカンガルー肉を「ルーミート」と名付け、この呼び名も一般的に広まっています。 しかし、日本で暮らす私たちにとって、カンガルーの肉を口にする機会はごく限られています。実際にどのようなものか見たことや食べたことのある人は少ないことでしょう。 カンガルー肉を使ったドッグフードに興味はあるけれど、自分のよく知らない材料からできたフードを愛犬に食べさせることに不安を覚える飼い主さんもいます。 自分のワンちゃんにカンガルー肉が合っているかを見極めるためにも、カンガルー肉とはどのような食材で、犬にとってどのようなメリットがあるのかをしっかりとみていきましょう。

カンガルー肉とは

カンガルー肉は日本ではあまりポピュラーではありませんが、オーストラリアでは一般的に食べられている食材です。 オーストラリアのスーパーでは牛肉・豚肉などと並んで、ステーキ用やミンチにされたカンガルー肉や、カンガルーソーセージなどが売られています。 脂肪分が少なく高タンパクなカンガルー肉は、健康的な食肉としてオーストラリアで人気を集めており、ドイツやフランス、イギリス、スイス、スウェーデンなどへも輸出されています。 輸入量は少ないですが、日本国内でもカンガルー肉を提供しているお店があります。

オーストラリアの先住民たち(アボリジニ)は、貴重なたんぱく源として、古来からカンガルーを捕獲して食べていました。 現在もカンガルー肉の調達方法は、オーストラリアに生息している野生のカンガルーを捕まえるという方法が取られています。 オーストラリア政府の政策により、カンガルーの天敵であるオオカミやディンゴが減ったことで、いくつかの種類のカンガルーが増えすぎた結果、農作物を荒らす「害獣」となりました。こうした環境や人に害をもたらすカンガルーが捕獲され、食肉として利用されているのです。

カンガルーは家畜として人に飼育や管理をされているわけではないので、抗生物質も投与されておらず、防腐剤の入った人工的な飼料で育てられてもいません。したがって、カンガルーの肉は薬剤の汚染のないクリーンな食材だということができます。

カンガルー肉の味は、人間からしてみれば「生臭い」「水が腐ったような独特なニオイ」「レバーっぽい味」「獣臭がする」などの不評な意見と、「濃厚な味」「クセが少なく美味しい」「牛肉に似ている」などという好意的な意見に分かれます。 その人の好みや肉の鮮度、調理方法によっても評価が異なると思われますが、この生臭さや獣臭は犬が好みやすいニオイであるため、犬にとっては嗜好性が高い食材だと考えられます。

カンガルー肉の栄養素

共役リノール酸(CLA)が豊富

カンガルーの肉は「食べれば食べるほど痩せる肉」と呼ばれ、テレビでも特集が組まれることがあるほど、ダイエット効果や筋肉増強が期待できる食材です。 その根拠として、カンガルー肉に含まれる共役(きょうやく)リノール酸(CLA)の存在が挙げられます。

共役リノール酸とは、1980年代にアメリカのウィスコンシン大学で発見された脂肪酸の一種です。 生物の体に含まれる脂肪を構成する成分の中でも、特にメインとなるものが脂肪酸です。 焼いた牛肉のハンバーグの中から、「構造上はリノール酸に似ているけれども、作用は全く異なる」ガン抑制効果のある物質が見つかりました。それが「共役リノール酸」と呼ばれるようになります。

リノール酸はヒマワリの種や紅花油など植物由来の食材に多く含まれています。 対して共役リノール酸は、牧草などに含まれるリノール酸が反芻動物()の胃の中に入った際に変化を起こして作られる物質です。 カンガルーは偶蹄目ではなく反芻動物とは呼べませんが、ウシやヒツジたちと同じように反芻をする習性があります。

共役リノール酸がダイエットに効果的であると発表されたのは2004年のことです。 共役リノール酸は「ホルモン感受性リパーゼ」という酵素の働きを助けます。ホルモン感受性リパーゼには、脂肪を細かく分解して燃焼しやすくする働きがあるため、共役リノール酸の効果で更にその効果が促進されるというわけです。

また、細胞内に脂肪を溜め込む役割を持つ「リポタンパク質リパーゼ」という酵素の働きを阻害します。 さらに、筋肉の隅々まで栄養を届ける働きもあるので、筋肉の成長や増強が期待できるのです。 筋肉量が増えれば基礎代謝(睡眠中や食事中、呼吸をするなど、生き物がただ生きているだけで消費されていくエネルギー)もアップします。基礎代謝が上がるということはそれだけカロリーが多く消費されるということなので、痩せやすく太りにくい体を作ることに繋がります。

更に共役リノール酸は、悪玉コレステロールを抑える働きも持ちます。 「ガンを抑える効果のある物質」として発見された経緯が示す通り、共役リノール酸は体をサビつかせて生活習慣病や老化の原因となる活性酸素の働きを抑制し、体を酸化から守ってくれるのです。

※ ウシやシカ、ヒツジ、キリンなど、胃が4つに分かれており、一度飲み込んだ食べ物を再度口の中に吐き戻して咀嚼する習性のある、偶蹄目に分類される動物。

高タンパクで低脂肪

カンガルー肉がダイエット向きだといわれるもう一つの理由は、脂肪含有率の低さです。 カンガルーはどの部分の肉においても、脂肪の含有率は最高でも2%と非常に低脂肪なのです。贅肉がなく筋肉質で、ボクシング選手に例えられることも多いカンガルーのあのスリムな体形からも、体脂肪の少なさはうかがえますよね。

カンガルー肉は、鶏肉のササミよりも脂肪が少なくカロリーも低く抑えらていますが、タンパク質量は豊富という優れた素材です。 そのため、「肥満気味だから痩せさせたいけれど、食欲が旺盛で困る」といったワンちゃんにも、しっかりと食事をさせながらダイエットをすることが可能なのです。 実際にオーストラリアのメルボルン大学で行われた研究によって、カンガルー肉を食べることでのコレステロール値の低下や、体重の減少効果があることが確認されています。この結果は、糖尿病や心臓病などの生活習慣病患者にカンガルー肉中心の食事を取るようにしてもらい、収集されたデータから導き出されたものです。

カンガルー肉が適している犬

カンガルーの肉が適している犬は、上記のように太り気味でダイエットが必要なワンちゃんがまず一番に挙げられます。 脂肪分が極度に少なく高タンパクな肉質、そして脂肪燃焼の促進と筋肉を増やす働きを持った共役リノール酸の相乗効果で、痩せやすく太りにくい体を作ることができるでしょう。

また、カンガルー肉はアレルギーを起こしにくいため、他の肉類や魚類にアレルギーを持つワンちゃんでも、比較的食べられる子が多い食材です。

そして、日常生活においてよく動き回る犬や、使役犬、スポーツ競技に出場するワンちゃんたちにもカンガルー肉はオススメです。 カンガルーの肉に共役リノール酸が豊富に含まれているというお話は前述の通りですが、この共役リノール酸はスポーツ時のパフォーマンスを向上させる効果を持っていることが、日本の順天堂大学のラットを用いた実験によって判明しています。 もちろんカンガルー肉は薬ではないので、与えたからといってすぐにワンちゃんのスポーツ成績がグンと伸びるというわけではないでしょう。しかし、運動時に脂肪をエネルギーへと変換しやすくしてくれる効果は期待できます。人間のアスリートでも、日々の食事にカンガルー肉を積極的に取り入れている人は多いのです。

カンガルー肉の注意点

カンガルーの肉に関して、ひとつだけ気になる情報があります。 それは、2008年にロシアがオーストラリアより輸入したカンガルー肉より抗生物質が検出されたという出来事です。さらに翌年には大腸菌が見つかりました。 こうしたカンガルー肉の衛生面への懸念から、ヨーロッパ各国でも国民の健康を守るため、カンガルー肉の輸入や流通を停止したほうがよいのではないかという声が強まっています。 たしかにカンガルーの肉は、人の手で育てられた家畜と比べて衛生管理が不充分な状態での運搬や解体、保存をされる可能性があると指摘されています。しかしオーストラリア政府は、カンガルーは野生下の生物なので、家畜と同等の衛生環境で処理することは不可能であると反論しています。 もちろん流通しているカンガルー肉が100パーセント菌に汚染されているというわけではありません。しかし、こうした不衛生なカンガルー肉がドッグフードに混ざっていないという保証はない、ということは頭の片隅に置いておくべきでしょう。

まとめ

以上、カンガルーの肉についてご紹介しました。 カンガルーの肉は、ダイエットやスポーツなどを行うワンちゃんたちを強力にサポートしてくれる食材です。 カンガルー肉の衛生面がやや引っかかるところではありますが、市販のドッグフードを買うにせよ、生肉を求めるにせよ、衛生管理や検査がしっかりとなされているかの判断は各メーカーのコメントを信用するしか方法がありません。 良質なカンガルー肉を見分けることは容易ではないですが、信頼できるお店や犬の飼い主さん同士の情報交換などを通して、安全なものを選びたいですね。