ドッグフードに含まれる脂肪酸の種類と特徴

ドッグフードに含まれる「脂肪酸」

私たちの脂質への一般的なイメージといえば、「取り過ぎると太る」、「血管に詰まって高脂血症の原因となる」などというように、ネガティブなものが大半です。
そんなマイナスイメージから、愛犬に対しても、「脂質をできるだけカットした食事を与えたい」と考えていらっしゃる飼い主さんは多いのではないでしょうか。

しかし脂質は、タンパク質や炭水化物よりも高い熱量を持った、効率の良いエネルギー源なのです。
また、ビタミンAやビタミンEといった脂溶性ビタミン(油脂に溶ける性質を持つビタミン)を効率よく吸収させるために働くなど、大切な役割を持ちます。

この脂質の主な構成要素が脂肪酸です。
ここでは、脂肪酸の種類やワンちゃんの体内での働きなどについてご紹介していきたいと思います。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

肉や魚、乳製品、植物油などに幅広く含まれている脂質は、その大部分が脂肪酸という酸から構成されています。
脂肪酸と一口にいっても多くの種類に分かれており、それぞれの持つ性質や働きには特徴があります。
脂肪酸の分類とそれぞれの特徴を、順を追ってご説明します。

飽和脂肪酸は炭素が水素で満ちている状態

脂肪酸は、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に大別されます。
まずはこの二つの脂肪酸の違いからみていきましょう。

脂肪酸は鎖のようにいくつも連なった酸素と水素、そして炭素という三つの元素から構成されています。
炭素からは4本の手が伸びており、他の元素と手を繋ぎ合うことが可能です。
この炭素がそれぞれ1本ずつ手を使い、自分以外の炭素2つ、水素2つと握手をしている状態のものを飽和脂肪酸と呼びます。
炭素が「水素で満ちている状態(これ以上水素が結びつくことが不可能な状態)」=「飽和している状態」であるため、「飽和」脂肪酸というのです。

文章だけでは分かりにくいため、ごくごく簡易的な図を下に用意しました。
図は、飽和脂肪酸の一部を切り取り、拡大したものとお考えください(実際には、もっと多くの炭素と水素が連なっており、端の方には酸素もくっついています)。

炭素から伸びる黒い線が「炭素の手」です。
炭素の手が、両脇の炭素、そして水素と結びついていることが分かります。

飽和脂肪酸は、ひとつの炭素につき水素が二つ、重り(おもり)のようにしっかりとくっついているため、安定性に優れています。
そのため、熱や酸素にさらされても変質しにくいというメリットがあります。

また、融点(脂肪が溶け出し液体となる温度)が高い傾向にあるため、飽和脂肪酸の含有量の多い牛や豚の脂などは、常温でも一定の硬さで存在できる(溶けにくい)のです。
冷めてしまったラーメンのスープなどの表面に、白く固まった油が浮いていることがあるかと思いますが、それはこの飽和脂肪酸の性質によるものです。

不飽和脂肪酸の特徴は炭素の二重結合

不飽和脂肪酸も、飽和脂肪酸と同様に、炭素と水素が結びついて構成されています。
しかしこの構造の中に、炭素同士が2本の手を使って繋がっているものが混じっているのです。
これは二重結合といい、飽和脂肪酸と大きく異なるポイントです。

二重結合状態の炭素には、水素はひとつしか付いていません。
このように、炭素が水素で飽和していないものを不飽和脂肪酸と呼びます。

不飽和脂肪酸は、ひとつの水素としか結びついていない炭素が存在することによって安定性に欠け、熱や酸化に弱いという性質を持ちます。
飽和脂肪酸に比べて融点も低いため、不飽和脂肪酸を多く含有する油は常温下でも液体となっていることがほとんどです。

飽和脂肪酸は効率の良いエネルギー源

飽和脂肪酸には、ブタン酸(酪酸)やラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などといった脂肪酸が属しています。
この項目では、これら飽和脂肪酸の特徴について詳しく解説します。

含有量の多い食品
牛肉、豚肉、鶏肉、バター、ココナッツオイル、パーム油(ヤシ油)など
特徴
飽和脂肪酸が多く含まれる脂質の最も重要な役割は、ワンちゃんが体を動かす際のエネルギー源となることです。
脂質は、タンパク質や炭水化物に比べて、1g当たり9kcalという多くのエネルギーを生み出すことができます(ちなみに、タンパク質と炭水化物のエネルギー量は、1g当たり4kcal程度です)。
人間よりも身体能力が高く、活動量も多いワンちゃんたちにとって、脂質は非常に効率良くエネルギー補給ができる栄養素なのです。

また、コレステロールや中性脂肪が作られる際の原材料ともなります。
コレステロールも中性脂肪も体を維持するためには必要な成分です。
しかし、どちらも増えすぎると動脈硬化のリスクを上昇させ、肥満の原因ともなるため、適度な値を維持することが大切です。

不飽和脂肪酸の種類と作用

不飽和脂肪酸は、前述の二重結合が「鎖の端から数えて、何番目で起こっているか」によって、オメガ3系、オメガ6系、オメガ9系に分けられます(「オメガ〇系」は、「ω-〇系」や「n-〇系」と表記されることもあります)。

不飽和脂肪酸には、EPAやリノレン酸、リノール酸、オレイン酸などのさまざまな種類があります。
これらの脂肪酸は似通った働きを持ちながらも、それぞれ異なる作用も発揮して、ワンちゃんの健康維持に貢献してくれるのです。

この中で、オメガ3系とオメガ6系に属する脂肪酸は、二重結合が複数存在する多価不飽和脂肪酸、オメガ9系の脂肪酸は二重結合がひとつだけの一価不飽和脂肪酸と呼ばれます。
以下は、ワンちゃんの体内で重要な働きをする主な不飽和脂肪酸の簡単な一覧です。

主な不飽和脂肪酸の種類と働き
種類 期待できる働き 含有量の多い食品
オメガ3系(多価不飽和脂肪酸) EPA(エイコサペンタエン酸) ・血小板の凝固を抑制し、血液をサラサラにする
・アレルギーの炎症を抑える
イワシ、サーモン、マグロなどの魚類、猪肉
DHA(ドコサヘキサエン酸) ・血管を柔らかくして、血液の流れを促進する
・暗順応の正常化や学習能力の向上に関与する
イワシ、サンマ、サーモンなどの魚類、鹿肉、猪肉
α-リノレン酸 ・体内に入ると、EPA、DHAへと変化する
・犬の必須脂肪酸
えごま油、しそ油、亜麻仁油
オメガ6系(多価不飽和脂肪酸) リノール酸 ・血中コレステロールを減らす
・セラミドの原料となり、皮膚や被毛に潤いを与える
クルミ、ごま油、コーン油、大豆油、ヒマワリ油
アラキドン酸 ・細胞膜の原材料であり、粘膜保護作用を持つ
・脳機能の発育や維持に関与する
卵黄、レバー、肝油
γ-リノレン酸 ・アトピー性皮膚炎などの炎症を抑える
・LDLコレステロール値を低下させる
月見草油、ルリチシャ油、ヘンプオイル
オメガ9系(一価不飽和脂肪酸) オレイン酸 ・HDLコレステロールを減らさずに、LDLコレステロールのみを減少させる
・皮膚の常在菌を増やし、皮膚を保護する
キャノーラ油、オリーブオイル、牛や豚の脂

次の項目からは、それぞれの脂肪酸の特徴を詳細にみていくことにましょう。

オメガ3系の脂肪酸

EPA(エイコサペンタエン酸)
含有量の多い食品
イワシ、サンマ、サーモン、マグロなどの魚類、猪肉(

※植物油や魚類の含有量にはかないませんが、肉類にも飽和脂肪酸を多く含むものが存在します。こうした肉類の中で、ドッグフードの原材料として使用されているものを併記していきますので、フード選びの参考になさってください。

特徴
EPA(エイコサペンタエン酸)が体内に入ると、エイコサノイドという成分が合成されます。
エイコサノイドには、血小板が固まることを抑え(血栓が作られにくくなる)、血液の流れを良好に保つ働きがあります。
また、アレルギーによる炎症を抑えたり、免疫力を上げる効果なども確認されているのです。

このように、良いことずくめのように思えるエイコサノイドですが、この成分には善玉と悪玉があります。
前述通り、EPAからつくられるエイコサノイドは、健康効果の高いいわゆる「善玉」です。
しかし、リノール酸が代謝されることによって作られるエイコサノイドは、善玉とは正反対の作用を持った「悪玉」といわれています(このことについては後述します)。

EPAには、非常に酸化しやすいという特徴があります。
酸化した脂質は「過酸化脂質」と呼ばれ、ワンちゃんの体内の細胞までをも錆びつかせます。
これにより、老化速度の加速やアレルギー、ガン、心臓病、糖尿病、高血圧などが起こりやすくなる可能性が示唆されているのです。

EPAだけではなく、二重結合が複数箇所存在するオメガ3系・オメガ6系の脂肪酸は、全体的に酸化速度が速い傾向にあります。
こうした脂肪酸を含む油脂を愛犬に与える場合には、鮮度や保存状態に気を配り、なるべく早いうちに使い切るようにしましょう。

DHA(ドコサヘキサエン酸)
含有量の多い食品
イワシ、サンマ、サーモン、マグロなどの魚類、鹿肉、猪肉
特徴
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、血管そのものを柔らかくして血流改善に貢献してくれます。
また網膜に多く存在する成分であるため、DHAが不足すると、ワンちゃんの暗順応や正常な視力が阻害されることもあります。

暗順応とは、明るい場所から暗闇に入った時に、次第に目が慣れて(順応して)周りの状況が見えるようになることです。
屋外で飼われているワンちゃんや、夜道の散歩、夜中の行動時など、自ら灯りをつけることのできない犬たちにとっては、非常に大切な能力です。

DHAは脳のリン脂質を構成する成分でもあるため、しっかりと摂取することによって、記憶力や集中力などを最高の状態で保つことができやすくなるといわれています。
これはワンちゃんの学習能力が上がることを意味しており、さまざまなしつけを行う時などに役立つでしょう。
脳機能の衰えが心配なシニア犬にも、積極的に摂らせたい成分です。

とはいえ、DHAへの過剰な期待は禁物です。
よく、「DHAを摂ると頭が良くなる」などといわれます。
しかしこれは、「DHAで記憶力が良い状態に保たれ、物事を早く覚え忘れにくくなる」といった方が正確でしょう。

2017年12月現在までに、DHAの摂取によって、ワンちゃんの知能自体が向上したというデータの報告はありません。
あくまでも、「DHAによって、愛犬が現時点で持っている能力を最大限に発揮しやすくなる」という認識でいることが大切です。

α-リノレン酸
含有量の多い食品
えごま油、しそ油、亜麻仁油(フラックスシードオイル)など
特徴
α-リノレン酸(アルファリノレン酸)はワンちゃんにとっての必須脂肪酸です。
必須脂肪酸とは、ワンちゃんが生きていく上で不可欠な栄養素であるにもかかわらず、体内で合成不可、もしくは少量しか作れず必要量に満たないために、食品などから補う必要がある脂肪酸のことです。
α-リノレン酸には、ワンちゃんの皮膚に水分を閉じ込めて潤いを保ち、被毛を艶やかな状態にキープする働きがあります。

またα-リノレン酸は体内で、EPA→DHAへと順を追って変化します
しかし、ワンちゃんにおいては、何割程度のα-リノレン酸がEPAやDHAに変化するかはハッキリとしておらず、個体差があるといわれています。
中にはこの変換があまりうまくできない子もいるため、EPAやDHAを含む食品を直接与えた方が効率的で確実だという意見もあるのです。

こうした背景から、最近(2017年12月現在)のドッグフードには、EPAとDHAを豊富に含むフィッシュオイルを添加した商品も増えてきました。
さらにはワンちゃん向けに、フィッシュオイル(サーモンやマグロなどから抽出したオイル)のみをボトリングした商品も販売されています。
スプレータイプの容器に入っているものなら、いつものフードに吹きかけるだけで手軽に使えますし、量の調節も簡単です。
また、これらの脂肪酸を含んだ犬用サプリメントも各メーカーから出ています。

オメガ6系の脂肪酸

リノール酸
含有量の多い食品
クルミ、ごま油、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、サフラワー油(紅花油)、鹿肉、母乳など
特徴
リノール酸も、ワンちゃんの必須脂肪酸です。
まだドッグフードを食べることのできない授乳期の子犬は、母犬の母乳に含まれるリノール酸を摂取しています。

リノール酸には、血中のコレステロール値を減少させる、血圧を下げるなどの効果が認められています。
またリノール酸は、皮膚の潤いを保つセラミドの原料にもなる栄養素です。
ワンちゃんの皮膚や被毛を保護し、良好なコンディションを保つ働きが期待できるでしょう。

リノール酸は取り過ぎることによって、血栓の生成やアレルギー症状を起こしやすくなるといった可能性が指摘されています(詳しい仕組みについては、次のアラキドン酸の項目をご確認ください)。
市販されている多くのドッグフードは、リノール酸の含有量が高いため、過剰摂取気味のワンちゃんが増加傾向にあることも問題となっています。

アラキドン酸
含有量の多い食品
卵黄、レバー、肝油など
特徴
アラキドン酸細胞膜の原料となり、胃粘膜などの保護に役立つ栄養素です。
また、加齢により衰えた脳機能の状態を改善したり、胎児や子犬の脳の正常な発育、物を覚える力の向上にも関わるといわれています。

アラキドン酸は食品から摂取する他にも、体内におけるリノール酸代謝の際に、リノール酸→γ-リノレン酸→アラキドン酸という流れで合成されます。

アラキドン酸からはエイコサノイドが作られます。
EPAの項目でご説明した善玉のエイコサノイドとは異なり、こちらのエイコサノイドは、血液の凝固、気管や血管の収縮、炎症の誘発などさまざまな健康上の問題を起こす可能性を持った成分です。
エイコサノイドのこうした作用は、血栓の生成、アレルギーの発症や悪化などの症状で現れることがあります。また、免疫力の低下も報告されています。

γ-リノレン酸
含有量の多い食品
月見草油、ルリチシャ油、ヘンプオイル(麻オイル)、馬肉、母乳など
特徴
γ-リノレン酸(ガンマリノレン酸)には、炎症抑制の作用があり、アトピー性皮膚炎の症状緩和効果が期待できます。
実際に、イギリスやフランス、ドイツなどではアトピー性皮膚炎患者(人間)の治療に、γ-リノレン酸が用いられているということです。
またγ-リノレン酸は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の数値を低下させたり、血糖値や血圧を正常な状態に保ち、体の調子を整えてくれる働きも持ちます。

γ-リノレン酸はワンちゃんの体内でリノール酸から合成されますが、その合成能力は年齢とともに衰えていきます
γ-リノレン酸が充分に合成できなくなると、皮膚が乾燥し、痒みが引き起こされることがあります。
そのような時には直接食品から摂取させましょう、といいたいところなのですが、γ-リノレン酸は、キャノーラ油やオリーブ油、ごま油といった私たちが日常的に利用している油にはあまり含まれていません。

γ-リノレン酸を多く含有しているのは、月見草油ルリチシャ油(ボラージオイル)です。
どちらもあまり一般的ではないオイルですので、少しご説明します。

月見草油

アメリカ大陸が原産といわれる月見草は、夕方頃に花が開き出し、夜に満開を迎えるという生態を持ちます。
「月見草」と呼ばれる植物にはいくつかの種類があり、左の写真は観賞用の「ヒルザキツキミソウ」、右は食用にもなる「マツヨイグサ」です。
ふたつの植物は花の色も形も異なりますが、同じマツヨイグサ属に分類されます。

写真右側のマツヨイグサの種子から採れるオイル(月見草油)に、γ-リノレン酸が多く含まれています。
月見草油はワンちゃん用のサプリメントととして販売されている他、種類は少ないもののドッグフードに配合されていることもあります。

ルリチシャ油(ボラージオイル)

こちらはムラサキ科ルリジサ属のルリチシャ(ルリジサやボラージ、ボリジともいいます)という植物の写真です。
地中海沿岸を原産地とするルリチシャは、青い星の形をした個性的な花を咲かせます。
ハーブの一種であるルリチシャの葉や花は、西洋において料理の飾りや香りづけなどに利用されてきました。

このルリチシャの種子から搾った油がルリチシャ油(ボラージオイル)です。
ルリチシャ油も月見草油と同様に、ドッグフードやワンちゃん用のサプリメントに配合されています。
またドッグフードの中には、ルリチシャの油ではなく種子そのものが配合された商品もあります。

オメガ9系の脂肪酸

オレイン酸
含有量の多い食品
キャノーラ油(菜種油)、オリーブオイル、牛や豚の脂、エミュー肉、ニシン、ナマズなど
特徴
オレイン酸の代表的な働きは、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させることです。
この時、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の数は減らさずにキープするため、効率的に高脂血症を防ぐことができます。

ワンちゃんは本来、LDLコレステロールよりも HDLコレステロールの値が高いため、高脂血症(脂質異常症)からの動脈硬化を起こしにくい動物です。
しかし、100%発症しないとも言い切れませんし、犬種によっては高脂血症になりやすいケースも存在します。
その犬種には、

  • シェットランド・シープドック
  • ミニチュア・シュナウザー
  • シーズー
  • ロットワイラー
  • ドーベルマン(別名:ドーベルマン・ピンシャー)

などが挙げられます。

こうした犬種のワンちゃんたちのコレステロール値には、特に気を配りたいものです。
もちろん、他の犬種のワンちゃんであっても、コレステロールや中性脂肪の値が増えすぎないように注意することは、決して無駄ではありません。

またオレイン酸には、皮膚上の常在菌を増殖させて、皮膚を保護する作用も認められています。
「菌」というと、体に悪影響を及ぼす悪者のイメージがありますが、全ての菌がそうとは限りません。
常在菌は生物の体に常に生息しながらも、(通常は)ダメージを与えない性質を持つ菌のことです。

皮膚の常在菌には、表皮ブドウ球菌やアクネ菌などがおり、これらは皮膚を弱酸性の状態にキープする働きを持ちます。
これにより、アルカリ性の環境で増殖する体に有害な細菌類を抑えているのです。

オレイン酸は、不飽和脂肪酸の中においては「酸化に強い」という特徴があります。
オレイン酸には、二重結合の部分が一ヶ所しかないため、比較的安定性が高いのです。
とはいえ、炭素と水素ががっちりと結合している飽和脂肪酸の安定感にはかないません。
過信はせず、他の不飽和脂肪酸と同様、オレイン酸を含む食品の保管にも気を配りましょう。

ドッグフードには肉や油の形で脂肪酸が入っている

脂肪酸はワンちゃんの健康維持には不可欠の栄養素です。
特に、犬の必須脂肪酸であるリノール酸などは、必ず食品から摂取しなければなりません。
そのため、総合栄養食であるドッグフードには、これらの脂肪酸が含まれています。

とはいえ、ドッグフードに脂肪酸をそのまま添加することは、ほとんどありません。
前述通り、脂肪酸はさまざまな脂質に豊富に含まれていますので、敢えて脂肪酸を添加しなくても、フードの原材料となる肉類や魚類、またはその油脂、植物油などから摂取できるためです。

しかし、保存状態(高温多湿での保管、袋の口をきちんと閉めていないなど)が悪く脂質が酸化してしまったフードや、低脂肪のフード、栄養バランスが考慮されていない手作り食などを長期的に与え続けることで、ワンちゃんが必須脂肪酸不足に陥る可能性は否定できません。
もちろん、偏食気味でいつも同じものしか食べないようなワンちゃんにも、同様のリスクはあります。

脂質の酸化は必須脂肪酸不足になるばかりでなく、体内を酸化させてガンや糖尿病など多くの生活習慣病の発症要因となることも指摘されています。
また、フードのニオイや味も悪くなりますので、ワンちゃんの嗜好性にも悪影響が出てくるでしょう。

いくらドッグフードに酸化防止剤が使われているとはいっても、それも万能ではありません。
一度フードのパッケージを開封してしまえば中身が酸素に触れ、酸化が始まってしまうのです。

こうした事態を防ぐためには、パウチや缶入りのウェットフードであればその日のうちに、ドライフードでも1ヶ月以内には使い切るようにしましょう。
フードの種類によっては、もっと短い期間しか品質が保てない商品もあります。
こうした事柄はドッグフードのパッケージに表示してあるはずですので、新しい種類のフードを購入した時には、まずはじっくりと表書きの注意事項を確認することをおすすめします。

まとめ
以上、さまざまな脂肪酸の種類と働きをご紹介しました。
ここに挙げた脂肪酸は、同じような働きを持つことも多いですが、それぞれに個性的な作用も持ち合わせています。
したがって、どれか一種類の脂肪酸を集中的に摂取させればよいというものではなく、全てを満遍なくとることで、ワンちゃんの健康を多方面からサポートすることが可能となるのです。

これらの脂肪酸を多く含むオリーブオイルやごま油、亜麻仁油、えごま油などは、お店でも手軽に購入することができます。
愛犬が普段食べているドッグフードにトッピングとして利用することも簡単にできますので、それぞれの脂肪酸の特徴を見比べて、ワンちゃんの状態に適した栄養素を補ってあげてください。