少食の犬におすすめしたいドッグフードの特徴と選び方

犬が少食になる原因はさまざま

「ワンちゃんがいつもドッグフードを残してしまう」
「そっぽを向いて、食事に口を付けてもくれない」
こうしたお悩みを抱えている飼い主さんは多くいらっしゃいます。

ひと口にワンちゃんの少食(小食)といっても、その理由はさまざまです。
もしも病気によって食欲が低下しているのならば、治療をしなければなりません。
おやつの与えすぎで満腹になり主食が入らないだけであれば、おやつをカットするか量を減らせばよいでしょう。

しかし中には、もともとの体質や体格などによって生まれつき少食のワンちゃんもいます。
また、人間と同じように犬も歳をとると消化器系や歯が弱くなり、食欲が低下してしまう場合もあります。
残念ながら少食の体質を改善できるドッグフードというものは、2017年10月現在では発売されていません。
したがって、今出回っている(もしくは手作りしている)ドッグフードの中から、ワンちゃんが少しでも多く食べてくれるものを工夫して与える必要があります。

ここでは、もともと(または加齢によって)少食の性質を持つワンちゃんのためには、どのようなドッグフードを選べばよいのかについてご説明していきたいと思います。

少食の犬に栄養を効率良く摂取させるためのフード選び

ワンちゃんが少食となってしまう体質や体格には以下のようなものが考えられます。

  • 生まれつき消化器系の働きが弱く、食欲が湧きにくい 
  • ワンちゃんの体にとって適していない食材を拒否している(アレルギー物質や消化しにくいものなど)
  • 胃が小さく、一度に多くの食事が入らない(小型犬の場合)
  • 老化による胃腸や歯の衰えから、フードが食べにくくなっている

これらの理由から食が細くなっているワンちゃんたちには、まず「少量でも必要な栄養素が摂取でき、食い付きがマシになる」ドッグフードを与える必要があります。
具体的には、以下のような条件を満たしたドッグフードを選ぶようにしましょう。

「総合栄養食」の表示がある

まずは大前提として、少食・大食い問わず、ワンちゃんの主食のドッグフードには「総合栄養食」と書かれてあるものを選びましょう。
総合栄養食にはワンちゃんが必要とする栄養素がバランス良く含まれており、このフードと水があればそれだけで健康が保てる設計となっています。

さらに「AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準を満たしています」といった旨の表記があれば安心です。
AAFCO(米国飼料検査官協会)はアメリカにある組織で、ペットフードにおける栄養基準を規定し公開しています。
AAFCOの栄養基準は現在世界で最も参考にされており、日本のほとんどのペットフードメーカーも取り入れています。
AAFCOの基準を満たしているドッグフードは、ワンちゃんの体に必要な栄養素が満遍なく入っていると判断できます。

ただし、AAFCOが各ペットフードを総合栄養食と認定しているというわけではないため、「AAFCO合格」や「AAFCO認定」といった表記は禁止されています
これらの表示がなされているフードの信ぴょう性は低いと考えられますので注意してください。

ドッグフードには総合栄養食以外にも「一般食」、「副食」、「間食」などがありますが、これらのフードは全ての栄養素が充分に入っているわけではありません。
主食には使わず、トッピングやおやつとして利用しましょう。

消化吸収性に優れている

たとえたくさんの量が食べられたとしても、フードの大部分が消化されずに排泄されてしまっては、ワンちゃんの体に満足に栄養が供給されません。それが少食の子であればなおさらです。
少食の愛犬のためには特にこだわって、消化吸収性に優れたドッグフードを与えるようにしましょう。

ワンちゃんは肉を始めとしたさまざまな食材から栄養が摂取できる、肉食寄りの雑食性です。
しかし肉類(魚類)に比べて、穀類や野菜類、豆類などの消化はあまり得意ではありません
したがって、肉類の代わりに小麦やトウモロコシなどが多く入っているドッグフードはオススメできません。
体内での消化が容易であり、しっかり栄養として吸収・利用できる肉類や魚類がメインとなっているフードを与えるようにしましょう。
ドッグフードの原材料欄は基本的に、含有量の多い食材から表記されています。
1番目に肉類の表示があるフードが望ましいでしょう。

消化吸収が容易であるフードは、ワンちゃんの胃腸が過剰に頑張ることなく処理することができます。
そのため、生まれつきや老化で胃腸の働きが弱いワンちゃんの体にも負担がかかりにくいというメリットがあります。
また、肉類や魚が多く使われているドッグフードは肉特有の香りが強く、ワンちゃんの食欲を刺激します。
穀類メインから肉類メインのフードに変更しただけで、驚くほどよく食べるようになるワンちゃんもいるのです。

「消化吸収率が高く、給餌量が少なくて済みます」といった記載があったり、フードによっては「消化吸収率〇〇%」などと公表されている場合もあります。
少食のワンちゃんに与えるフードは、こうした表記のある商品の中から選んだ方がよいでしょう。

ワンちゃんの最も好むタンパク質含有量は30%前後であるといわれています。
一般的な市販のドッグフードのタンパク質は、もう少し少なめのものが多いですが、高価格帯のフードではこれくらいのタンパク質量の商品も多くみられます。パッケージの栄養成分表をよく確認してみましょう。

犬の体に安全な素材を使っている

ワンちゃんたちは、私たち人間よりもはるかに敏感で繊細な感覚を持っています。
そのため、ドッグフードの中に自分の体に適していない素材が入っている場合には、本能的に口を付けないことがあるといわれているのです。
どのようなものを避けるのかはワンちゃんによって異なりますが、以下のような点に気を付けてフード選びをするようにしましょう。

体質に合わない素材が入っていない

食品アレルギーを持つワンちゃんの中には、アレルゲン(アレルギー症状を誘発する原因物質)となる食材が入っているドッグフードを敬遠する子がいます。
また、穀類の消化が非常に苦手で、食べると消化不良を起こしやすいワンちゃんの場合は、穀類がメインで使われたドッグフードを避けたりもするのです。

こうしたケースでは、自分の体に合わない食材の健康被害から身を守るために、犬が本能的に拒否していると考えられるため、フードの変更を検討しましょう。
今与えているフードを無理に食べさせると、アレルギーを発症したり、嘔吐や下痢を起こす可能性があります。

アレルギーの傾向は動物病院での血液検査や除去試験などによって確認することが可能です。
アレルギーの原因が判明したら、その食材が入っていないフードを選んで与えるようにしましょう。
アレルギー体質のワンちゃん向けに、穀物不使用や、サーモンやナマズ、ウサギ、カンガルーなど、普段犬が口にする機会の少ない素材を使った低アレルゲンドッグフードも売られています。

健康に有害な添加物が含まれていない

ドッグフードの中には、保存料や着色料、発色剤など多くの添加物が使われているものも存在します。
ワンちゃんがこれらの添加物に敏感に反応して、食べることを嫌がっているケースもあるのです。
特に気を付けたい物としては、エトキシキンBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)などが挙げられます。
これらはドッグフードの酸化を防ぐ酸化防止剤として使用されていますが、強い毒性が認められています。
少食のワンちゃんに限った話ではありませんが、こうした添加物を使用しているフードは避けたほうがよいでしょう。
酸化防止剤であるならば、ビタミンE(ミックストコフェロール)やビタミンC、ローズマリー抽出物など、安全性がある程度確認されている成分を使ったフードを選ぶことをオススメします。

エトキシキン、BHT、ローズマリー抽出物の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
 →ドッグフードの酸化防止剤「エトキシキン」の危険性とは?
 →ドッグフードの酸化防止剤「BHT」の危険性
 →ドッグフードの酸化防止剤「ローズマリー抽出物」の作用と安全性

ドッグフード自体の酸化を防ぐ

ドッグフードには肉類や魚、動物性・植物性油脂など、油分を含んだ材料が多く使われています。
開封してから日にちが経つと、次第にこれらの油分が酸化していきます。
酸化が進むと、パッケージを開けた際に油の腐ったような嫌なニオイがしたり、フードの味が低下します。
このニオイや味を嫌って食欲が落ちてしまうワンちゃんも多いのです。
開けたてのドッグフードへの食いつきは良いけれど、次第に食欲が落ちてくるといった場合には、こうした理由が考えられます。

特に体が小さく一度の食事が少量で済むワンちゃんの場合、どうしてもフードがなかなか減らないために、どんどんと酸化していきます。
ドライフードであれば、1ヶ月を目安に使い切れる程度の分量のものを買うようにしましょう。
しかし、フードによってはもっと早く使い切ることを奨励されているケースもあるため、パッケージの注意事項をよく確認するようにしてください。
小分けにされたフードは、大袋のものよりも若干値段は上がりますが、酸化のためにワンちゃんが食べてくれず無駄になることが防げるでしょう。
酸素の流入を防ぎ、フードの鮮度をキープできるフードストッカーなどを利用するのもひとつの方法です。
ウェットフードの使い残しは密閉容器に入れて冷蔵庫で保管し、なるべくその日のうちに使い切るようにしましょう。

犬好みの味・サイズ・形状を見つける

今まで挙げてきた条件の他にも、ワンちゃんの食いつきを少しでもよくするためには、以下のようなポイントにも注意をしましょう。

愛犬の好むタンパク源を把握する

私たちに食事の好みがあるように、当然ワンちゃんにも大好きな素材や苦手な素材があります。
日本においては犬は肉類を、猫は魚を好むというイメージが強いですが、肉より魚が好物のワンちゃんもいます。
市販のドッグフードのタンパク源として最も頻繁に用いられているのは鶏肉であるため、鶏肉メインのフードしか与えたことがないという飼い主さんもいらっしゃることでしょう。
鶏肉のフードで食い付きが悪い場合には牛肉や馬肉、鹿肉、ターキー、魚類など、メインとなるタンパク源の種類を変えて試してみましょう。
同じ素材のフードが続くとワンちゃんが飽きてしまって食い付きが悪くなることもあるため、色々な食材をローテーションすることで飽きの防止にもなります。

犬の体の大きさに適したサイズのフードを選ぶ(ドライフードの場合)

ドッグフードのサイズがワンちゃんの口や体の大きさに適していない場合にも、食い付きが悪くなることがあります。

ドッグフードの粒の大きさ

小型犬に大きな粒のフードを与えても、カリカリと噛んでくれるワンちゃんばかりではありません。
犬の口のサイズに対して大きすぎる粒は噛みにくいですし、丸飲みの習慣のあるワンちゃんに至っては、噛まずに飲み込んで喉に詰まらせる危険性もあります。
大きなフードを割ったり砕いて細かくしてあげるか、小型犬用の小粒のフードを利用するようにしましょう。
反対に、大型犬に小さすぎるフードを与えても嫌がられるケースもあります。
愛犬の食事風景をよく観察し、食べにくそうにしていないかチェックしてみてください。

また、体が小型なために胃も小さく、一度にたくさんの食事がとれないワンちゃんには、一日数回に分けてフードを与えてみましょう。

さまざまな形状

ドッグフードには、オーソドックスな丸く厚みのあるフードから中央に小さな穴の開いているもの、フレーク状のものや凹凸があるものなど、さまざまな形状のものが存在します。
こうした形によってもワンちゃんの好き嫌いが分かれ、「フレーク状のフードなら食べるけれど、丸いものは食べない」といった状況が生まれることがあります。
これもやはり食べやすさや食感が絡む問題だと考えられますので、色々な形状のフードを試してみましょう。

とはいえ、数回与えただけで「食い付きが悪いから」とドッグフードをコロコロと変更することはオススメできません。
言い方は悪いですが、ワンちゃんは「いかに楽をして、自分にとって良い結果を引き寄せるか」を考えることができる賢い動物です。
次々に新しいフードを出してしまうと、「これを食べなければ、もっと良い食べ物が出てくるのではないか」と期待して、今与えられている食事への食い付きが悪くなる可能性があります。
飼い主さんから見て、形状や大きさが愛犬にとって問題はなさそうだと判断できる場合には、しばらく同じフードを出して様子をみることも大切です。

ドライフードにするか、ウェットフードにするか

ドライフードに比べてウェットフードは肉本来の香りや食感に近いため、ワンちゃんの嗜好性が高いです。
また老化で歯が弱っていて、食事を満足に噛めないワンちゃんにとっても食べやすいやわらかさです。 このような理由から、ドライフードはあまり食べてくれなくても、ウェットフードは喜ぶワンちゃんも多いことでしょう。
しかし、ウェットフードは水分がたっぷりと含まれているために、多くの量を与えなければ必要な栄養素が摂りきれません
もともと少食のワンちゃんが、急に大量のフードを食べることは困難でしょう。
また、目の前にどっさりと食事が出ているだけで余計に食欲が失せてしまう子もいます。
いくら嗜好性が高いといっても、これでは本末転倒です。
反対に、ウェットフードのベチャっとした食感を嫌がり、ドライフードを好むワンちゃんもいますので、愛犬がどちらのタイプが好きなのかをよく見極める必要があります。

パピー用ドッグフードを利用する

パピー(子犬)用のドッグフードは成犬が食べるものではないと思われがちですが、少食のおとなのワンちゃんに与えることもできるのです。
上記に挙げたような特徴を備えたフードを与えても一向に食べてくれない愛犬には、パピー用のフードの利用も検討されてみてはいかがでしょうか。

パピー用のドッグフードは成犬用のものに比べて、カロリーやタンパク質、脂質、カルシウム、リン など、子犬の発育に必要な栄養素が多めに含まれています。
また、消化器系の発達が不充分な子犬のために、消化吸収しやすいように設計されていることもポイントです。
こうした理由から、パピー用フードの広告に「小食の成犬にも適しています」というような文言を書いているメーカーもあるくらいなのです。
通常の食欲がある成犬にとっては栄養過多となり太りやすいパピー用フードですが、成犬用の食事を規定量摂ることのできない少食なワンちゃんには良い選択肢となりえます。

まとめ
少食のワンちゃんにはどのようなフードを選べばよいかということについてみてきました。
愛犬が少食だと、「栄養不足で体調を崩すのではないか」と心配になり、「なんでもいいから食べてほしい」と、犬用おやつをたくさん与えてしまう飼い主さんもいらっしゃいます。
しかしおやつだけでは当然栄養が偏りますし、おやつのおいしさ(ものによっては甘さなど)に慣れてしまうと余計にドッグフードを食べなくなるという悪循環に陥る可能性もあるのです。
原因のハッキリしない少食の場合、改善することも容易ではありませんが、愛犬が少しでも多くの食事をとってくれるように根気強く試行錯誤することが大切です。
注意

※この記事の内容は、様々な「少食の犬用ドッグフード」の銘柄の特徴をまとめたものです。
商品によって特徴は多少異なりますので、すべての皮膚病用フードに上記の特徴が当てはまるわけではありません。